65.転職


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──── ギルガメッシュの酒場


......チリ~ン........♪



ロース 「……………………」
三洲次 「……………………」


........チリ~ン............♪



ロース 「ねぇ……、三洲次?」
三洲次 「ん?」
ロース 「あそこで鈴を鳴らしながら、頭にゴミ箱被って座ってるの………誰よ?」
三洲次 「背丈から考えて、ブリ助だろ……」
ロース 「なんでゴミ箱なんて被ってるのよ?」
三洲次 「本人に聞いてくれよ」
ロース 「え~~……、ちょっと怖いんだけど……。
 三洲次が聞いてみてよ……」
三洲次 「俺だって怖いよ……」


........チリ~ン..........♪


ロイン 「やぁやぁ、みんな揃ってるな!
 全員、俺の指示に従って転職し、無事に訓練を終えたな?」
ロース 「ちょっと、ロイン!!
 今回の転職について、私いくつか文句があるんだけど!」
ロイン 「なんだ?」
ロース 「順番に話すわ」
ロイン 「うむ」
   
ロース 「まず私ね。
   私は、僧侶から魔法使いへの転職。
 まぁ…これは全ての呪文が使えるようになるから、いいわ」
ロイン 「模範的な転職だと思うぞ。
 転職の教科書に載っててもおかしくない」
   
ロース 「次に、三洲次」
三洲次 「俺?」
ロース 「彼は、盗賊から侍への転職。
 盗賊だから、何に転職してもデメリットは無いし、
 日本人だから侍は適職でしょうね」
ロイン 「彼に相応しい転職だろ?」
三洲次 転職で侍になれるなんて、士農工商って何だろう……」
   
ロース 「ランプは……司教のまま、転職していないのね」
ランプ 「私は、財宝を集める道を進みたいですからね。
 これは私の人生の目標です!
 他の職業は断固として断りました」
ロイン 「それに、このまま全ての魔法を使えるようになれば
 我々も助かるので、彼だけは転職しない方が良いだろう…との判断だ」
ロース 「まぁ、彼もいいわ。
 問題は、ここからよ!!
ロイン 「なんだ?」
   
ロース 「まず、桃!」
「あたい?」
ロース 「彼女は、侍から盗賊に転職したらしいじゃないっ!!
 なんでよ?!
 前衛こそ天職の彼女を、なんで盗賊なんかに転職させたのよっ?!
 これじゃぁ前衛を務めてもらえないじゃないっ!!!」
ロイン 「まぁ、前衛以外を経験するのも、勉強になっていいと思うぞ。
 それに三洲次が盗賊じゃなくなったから、代わりの盗賊が必要なんだが、
 我々の中で盗賊に転職できるのは、戒律が"中立"の彼女だけだからな」
三洲次 「なぁ、桃?」
「うぃ?」
三洲次 「お前……、以前は史上最高点で訓練所を卒業したくせして、
 今回の盗賊は、史上最低点を叩き出したらしいな……」
ブリスケット 「この5年間で訓練所の1/4がぶっ壊れやしたが、
 全部桃っちが実技で失敗して、吹っ飛ばしたらしいじゃねぇっすか……」
ランプ 「訓練で本物の爆弾を使うんですか?」
三洲次 「火薬を匂いで見分ける試験とかあるからな……。
 でも、建物を吹っ飛ばすほどの量は使ってないはずだけど?」
「全然分かんねぇから、むかついて、試験場にある箱を全部壁にブン投げた」
三洲次 「……サイテーだ………」
ロース 「一度、訓練所全体に毒ガスが充満して、
 全員が避難する事件があったけど……、あれも桃だったんでしょ?」
ブリスケット 「そういや、ありやしたね……。
 あの事件、もう訓練所の歴史に残る伝説になってやすぜ……」
ランプ 「皆さん……、よくぞご無事で………」
三洲次 「あのさぁ…、桃?
 罠を調べたり解除したりとかって、けっこう繊細な作業なんだが、
 細かい作業は大丈夫だったのか?」
「あたい、細けぇこと大っっ嫌いなんだけど…」
三洲次 ダメじゃん!!
ロース ダメでしょ!!
ロイン 「……………………」
ロース 「どうすんのよっ?!」 
ロイン 「まぁまぁ、桃の転職は俺に考えがあるから、心配しないでくれ。
 それより、他にも文句があるようだが?」
ロース 「えぇ、あるわ……
   
ロース  ……一番意味不明なのは、ブリ助よっ!!!」
ブリスケット 「あっしが?!」
ロイン 「ブリ助は、侍から僧侶への転職だな。
 魔法使いの呪文も使える僧侶だから、別に意味不明とは思わないが?」
ロース ゴミ箱を頭に被た僧侶なんて、聞いたことないわっ!!!」
ブリスケット ゴミ箱ぉお?!!
 これはゴミ箱じゃねぇっす!!
 これは天蓋(てんがい)っていう編笠っす!!
 日本の僧侶が、旅に出る時に被るものですぜ!!!」
三洲次 「AC無さそうな防具だよな……それ……」
ランプ 「なんでエプロンしてるんです?」
ブリスケット エ・プ・ロ・ン??!
 これは袈裟(けさ)といって、日本の僧侶が身に付けるものっす!!
 人をメイドみてぇに言わねぇで下せぇ!!!」
三洲次 「袈裟って仏教じゃん……お前、本当に仏教なの……?」
ロイン 「まぁ、確かに俺も気になってたんだが……、
 なんでビーチサンダルなんて履いてるんだ?」
ブリスケット ビーチサンダルぅ?!!
 これは草履(ぞうり)といって、日本の僧侶が履くものっす!!」
三洲次 「そんなの履いてたら、戦いにくいだろ……」
ブリスケット 「さっきから聞いてりゃあ、三洲次っちも日本人なら、
 ちっとはフォローしてくれても良くねぇっすかっ?!!」
三洲次 「遠い異国の地でその恰好を見てることに、驚いて言葉が出ないんだよ……」
ロイン 「まぁまぁ、ブリ助のコスプレにはいろいろ言いたいこともあると思うが……
ブリスケット コスプレ?!
ロイン  …ブリ助には、後でちゃんと極上の鎧とか装備してもらうから、
 ここは我慢してくれ」
ロース 「あと、その鈴の付いた杖も、家に置いてきてね。
 音を出しながら歩いていたら、敵を呼び寄せるだけだわ」
ブリスケット 「そ……僧侶になるから……せっかく日本から取り寄せたのに………」
三洲次 「え?! わざわざ買ったの?!それ?!」
   
ランプ 「ところで……、ロインは何に転職したんです?」
ロイン 「おっと!
 俺のことは、今日から敬称を付けて呼んでくれ」
ロース 「…は?
サーロイン 「サー・ロイン とな!」
サーロイン 「俺は、君主に転職したんだ。
 爵位を得たのだから、尊称で呼んでくれ」
ランプ 「ちょっと待って下さい!
 君主って、統治権や行政権を持った貴族のことですよね?
 でも、貴族の尊称って『サイア』ですよ?
 なんで一般人の尊称の『サー』なんです?」
ブリスケット 「そもそも論っすけど、君主って転職でなれるんすか?」
三洲次 「日本だと、転職で殿様になれる、って言ってるのと同じだよな……」
ロース 「どうなってるのよ?」
サーロイン 「いや……俺って、元々貴族出身だろ?
 血統を示す紋章は肌身離さず持ってるから、貴族とは認めてもらえたんだ。
 ただ……リルガミンでは、統治区域や行政権が無いから、純粋な爵位じゃなくて、
 ……準男爵の爵位が……精いっぱいで………」
ランプ 「つまり、貴族だから君主と名乗るのはOKだが、
 ここでは実質平民だから、公式には一歩手前の準男爵止まり……と」
三洲次 「それで、君主なのに『サー』なんだ……」
ブリスケット 「微妙っすね…」
サーロイン 「まぁ……その……」
   
ロース 「まぁ、いいわ。
 仮にも君主なのだから、そこは尊重して、とりあえず『サー』で呼んであげるわ」
ブリスケット 「そうっすね!
 なんと言っても、我らのリーダーっすから!」
三洲次 「ともかく爵位が認められたのだから、尊称で呼ぶのが礼儀ですよ!」
ランプ 「その通りです! ここは敬意を示して呼びましょう!」
   
サーロイン 「お………お前ら……………」
   
ロース 「ところで、サー?
 飲み物が無くなったから、そこら辺にいる店員呼んでくれない?」
三洲次 「サー!コーヒー頼んどいて!」
ブリスケット 「サー!緑茶も!」
「ミルク!」
ランプ 「サー、お金払ってといてもらえます?」
サーロイン お前らあああぁぁっっ!!!



さて!!

今回、ローラーレンジャーズの面々を転職させました。


目的は1つ!


パーティー名「ローラーレンジャーズ」『レンジャーズ』には、

メンバー全員が 近距離攻撃 も 遠距離攻撃 も得意なパーティーにする!

...という意思を込めているので、ここで前衛・後衛を入れ替えて、
得意分野を広げてもらいたいからです!!


それではここで、上記を踏まえつつ、それぞれの転職について、
理由や意図とともに改めて振り返りたいと思います。


◆ロイン(魔法使い →君主


実用面では、魔法使い呪文僧侶の呪文も全て使え、かつ直接攻撃もでき、
しかもディスペルまで出来る上に、「聖なる鎧」の効果でクリティカルまで使えるという
万能冒険者を、彼には目指してもらいます!

遠距離攻撃・近距離攻撃のどちらも全てイケる、
まさにレンジャー・オブ・レンジャーズ!!

イメージ面では、パーティーを率いるリーダーを務める者は、
やはり最も優れた能力を持った者にしないとな!
....と、言う訳で。
それに、"善"のパーティーを率いるのは、やはり君主が一番相応しいでしょう!

余談ですが、彼を君主に転職させようと目論んでいたのに、
転職前は運の強さがなかなか上がらず、条件を満たせるのか?!と、
実はかなりハラハラしていました......。


◆三洲次(盗賊 →


実用面では、彼だけは未だに呪文が使えないので、とりあえず魔法が使える職業へ転職。
かつ、他メンバーの転職状況の兼ね合いで、前衛職を担当

イメージ面では、日本人ならば、やはりが一番似合っているので。


◆ロース(僧侶 →魔法使い


実用面では、僧侶の呪文も魔法使いの呪文も全て使えるスーパースペルユーザーを1人用意。
特に魔法使いは、レベル1→13で全呪文を覚えるので、司教よりも早く全呪文をマスターするはず!
なお、「1.キャラクターメイキング」でも書いた通り、この転職を見据えてエルフにしましたが、
僧侶上がりなので、エルフなのに高いH.P.の魔法使いとしても期待できるでしょう。

イメージ面では、桃と正反対の癒し系知性派女エルフ......だったはずなんだがなぁ......。


◆ブリスケット(侍 →僧侶


実用面では、治癒呪文を多く使える治療役のキャラを1人は置いておきたいため。
エルフで作ったキャラなので、僧侶でも問題無く成長するはず。
なお、侍からの転職なので、暇なときは魔法使い呪文で攻撃も可能
きっと便利なキャラとして活躍してくれるでしょう!

イメージ面では、日本オタクと”善”の戒律、そして他メンバーの転職状況を踏まえ、
転職できる中で日本にもある職業だと、まぁ僧侶かなぁ....ってところ。
実は....、彼の転職先は、ちょっと悩みました......。


◆ランプ(司教のまま)

実用面では、司教は自分で課したマイ ルール上必要なのと、
成長が遅いことを考慮して、一人が専任でやり続けた方が望ましいため。

イメージ面では、守銭奴・アイテム収集家を目指しているキャラなので、
彼以上の適任者は居ないでしょう。
このままチームの知恵袋として、頑張ってもらいます。


◆桃(侍 →盗賊


実用面では、三洲次の転職によって盗賊が居なくなったが、
戒律の関係上、桃しかその穴を埋められない....ってだけ

イメージ面では......、彼女については......まぁ、また後でな(ニヤリ)(*)


(*) 表現に他意は無いです。ウィザードリィIVのネタってだけです...。

 


以上で、全員の転職が完了したので、次は装備の交換や新調をします。


一番重要な村正をはじめ、桃が装備していた(現時点で)一品物のレア装備は....、


....一通り三洲次へ....、


....引き継いでもらう。

「ほら、村正は大切に扱えよ」
三洲次 「パーティーのエースの装備を引き継げるのは、光栄だな」



スペシャルパワーなんて、もちろん使わない(50%の確率で壊れるし)


そして、ロイン…おっと、ではなくてサーロイン(君主)は、
いよいよ3代目上級魔術師協会から手に入れた「聖なる鎧」を....、


....装備する!
これこそ君主の醍醐味!


その他、ボルタックで......


....防具などを新調して、全員の装備を揃える。
ACは機能してないから、防具なんてテキトーでいいのでしょうけど........
ま、雰囲気、雰囲気!


以上で転職後の準備も完了し、
いよいよ冒険を再開し......おおっと!


とても大切なことを忘れているぞ!!


君主になったロインのために、尊称を付けてあげなくては!!





今度こそ、本当に転職作業は完了!



新生「サーロインのローラーレンジャーズ」!
ここに再び集結!!


なお、転職直後の状態は次の通りです。

名前 LV H.P. コメント
サーロイン 1 102 8 8 5 8 8 9 0 0 リーダーとして万能冒険家を目指す!
三洲次 1 153 8 8 5 8 8 9 1 3 桃から村正を譲り受け、前衛での活躍を期待!
1 141 8 8 5 8 8 9 0 0 彼女をどうするかは、バレバレかな?
ロース 1 142 7 10 10 6 9 6 0 2 最速で全呪文を使えるスーパー魔法使いに!
ランプ 17 81 18 18 17 16 18 12 0 8 魔法は、しばらくは使用回数が多い彼が頼り。
ブリスケット 1 133 7 10 10 6 9 6 1 4 H.P.の高い僧侶が居るのは、大変心強い。


では、パーティー構成も新しくなったところで、
いよいよ次回から新しい冒険へと出発です!!

 

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【更新履歴】
2021年 7月 3日:読むのにかかる所要時間(目安)を掲載しました。
2021年 4月17日:台詞を一部見直し。
2020年 3月22日:台詞や文章を一部見直し。次ページへのリンクを設定。
2020年 3月15日:新規公開。