98.マイルフィックの再臨

【登場人物】  
サーロイン ローラーレンジャーズのリーダー。サーは敬称。
三洲次 元盗賊だった日本男児の侍。発音は「みすじ」。
元接近戦最強の少女。現在は盗賊。すぐキレる。
ロース こんな名前だが細身で美人なエルフの女魔法使い。
ランプ お金一筋のエルフの司教。パーティーの知恵袋。
ブリスケット 日本オタクのエルフの僧侶。あだ名は「ブリ助」。

読了時間 (目安):約10分



──── ギルガメッシュの酒場 早朝......

サーロイン 「では、本日もアイテム全種類入手を目標に、地下10階を回って行こう!」
ロース 「ここ最近、新しいアイテムが出ていないから、そろそろ出てほしいわね」
サーロイン 「そうだな。
 できれば『回復の指輪』が出てほしいところだな」
ブリスケット 「この前と言っていることが逆でっせ」
サーロイン 「やはり治癒呪文を節約できるのは大きいからな!」
三洲次 「一緒に歩いて治す仲間が欲しくなっただけでは?」
サーロイン 「いや、そんなことは………ちょっとはあるけど………」


とりあえず、まだ出ていないアイテムは、次の4種類です。

・守りの盾
・手裏剣
・回復の指輪
・破邪の指輪





──── 地下10階
     4代目上級魔術師協会 本部

アーチメイジ 「ハイウィザードよ!!
 なんとしてもローラーレンジャーズを倒すのじゃっ!!」
ハイウィザード 「は!お任せ下さい!
 これだけの数で奇襲すれば、奴らもただではすまないでしょう!
 なんとしても、奴らを倒してまいります!」
アーチメイジ 「うむ! 任せたぞ!」


…………


……………………


………………………………




──── 地下10階 第一玄室(1周目)


初戦は、あっさり勝利


でも、アイテムは「腐った皮鎧」だった。
残念。


──── 第二玄室(1周目)


バンッ!        ← 扉を蹴破った音



??? 「奴らが来たぞっ!!!」
??? 「殺ってしまえええぇっ!!」
サーロイン 「え?!」


サーロイン 「ふおおおおぉぉっっ!!?」



いきなりブレスの波状攻撃っ!!!

ビショップA 「きえええぇぇっっ!!」

ブリスケット 「ぐわああぁっ!!」
   
ビショップB 「ちょえええぇぇっっ!!」

ブリスケット 「ぎひいぃっ!!」
   
ハイウィザード 「死ねえええぇぇっっ!!!」

ブリスケット 「ぐふぅっ!!」

....そして奇襲ターンが終了。


思ったよりダメージは大きい方か?
ってか、ブリスケットが集中攻撃を喰らい、特にダメージがデカイな。

ハイウィザード 思い知ったか、ローラーレンジャーズめっ!!!
サーロイン 「ぐほっ………またか…っ!」
ハイウィザード 者どもっ!!
 敵は弱ってるぞ!!
 攻撃の手を休め…」
ロース ティルトウェイトっ!!
ハイウィザード 「え?!」


敵たち 「「ひぃぎゃああああぁぁっっ!!」」



ロース 「はい、一丁あがり!」
サーロイン 「まったく、しつこい奴らだ」
ブリスケット 「敵も躍起っすね」
ランプ 「では、宝箱を開けましょう!!」 
三洲次 「せめて何か良いアイテムが出れば……」


三洲次 「金だけかよ……」
ランプ 「お金が手に入ったから、いいじゃないですか!」
ブリスケット 「このやりとり、もう飽きたっす……」
ロース 「しかも、ここ最近見ないぐらい額がショボイわね」
サーロイン 「しけてるな、上級魔術師協会も」



1周目は成果無しで終了。




……………………

…………


──── 上級魔術師協会 本部

Lv10メイジ 「ハイウィザード様がやられましたっ!!」
アーチメイジ 「くそっ! またかっ!?」
Lv10メイジ 「こうなったら、外部の荒くれ者どもを雇いましょう!」
アーチメイジ 「大丈夫なのか?」


…………

……………………


──── 地下10階 第一玄室(2周目)


ハイプリースト達 「「ふぎゃああああぁぁぁっっ!!!」」


……………………

…………


──── 上級魔術師協会 本部

Lv10メイジ 「ダメでした」
アーチメイジ 早っ!!
Lv10メイジ 「では、速攻をウリにする傭兵を雇います!!」
アーチメイジ 「今度こそ大丈夫なんじゃろうなっ?!」

…………

……………………


──── 第二玄室(2周目)


??? てやあああぁぁぁっっ!!


三洲次 (ひょい!)


サーロイン 撤退!
ファイター 「え?」

バタンッ!!



……………………

…………


──── 上級魔術師協会 本部

Lv10メイジ 「傷1つ付けられなかった上に、相手にもされませんでした!!」
アーチメイジ なんじゃそりゃあっ?!
Lv10メイジ 「では、そこら辺にいるドラゴンゾンビにしましょう!!」
アーチメイジ テキトー過ぎじゃろっ!!!
 ダメダメなのが見え見えじゃわっ!!

…………

……………………


──── 第二玄室(2周目その2)


ドラゴンゾンビA ゴゥオオオオォォォッッ!!
サーロイン 「ぐわあああぁぁっ!!!」
ブリスケット 「あじゃじゃじゃっっ!!」
ロース 「テ、ティルトウェイトっっ!!」



三洲次 「はぁ…はぁ……先にブレスを吐かれるなんて……」
サーロイン 「ぜぇ…ぜぇ……まさか3匹ていどで苦戦するとは……」


……………………

…………

──── 上級魔術師協会 本部

Lv10メイジ 「意外と善戦しました」
アーチメイジ 「『意外と』の意味を説明しろ」
Lv10メイジ 「では、次はそこら辺にいるマーフィーでも……」
アーチメイジ やつらを倒す気無いじゃろっっ!!!
Lv10メイジ 「いやぁ~、もう何やっても無駄な気がして……」
アーチメイジ 「またか………。
 こんな失態ばかり繰り返しておったら、
 いずれワードナ様のお耳に入り、叱責を受けるのは時間の問題じゃ……」
Lv10メイジ 「今、対ローラーレンジャーズ専門の暗殺部隊を3チーム用意してるじゃないですか?
 もう彼らの特訓が終わるのを待った方がいいかと……」
アーチメイジ 「いや………止むを得ん……!!
 その対ローラーレンジャーズ専門の暗殺チームの中から、
 今すぐ"レベル10メイジ6人衆"を呼ぶんじゃっ!!」
Lv10メイジ 「え?
 今も言った通り、暗殺チームはどれも訓練中ですが…?」
アーチメイジ 「もはや背に腹は代えられん!!
 ワードナ様に醜態を知られる前に、なんとしても結果を出すのじゃ!!!」


…………

……………………


──── 第二玄室 戦闘後......


ランプ 「第一玄室は『最強の短剣』、
 第二玄室は『歪んだ盾』でした」
ロース 「ここ最近、ロクなアイテムが出ないわね……」
ブリスケット 「『歪んだ盾』って、けっこう仰山出てきやすね」
サーロイン 「ここで戦闘に敗れると、装備はボロボロになるだろうから、
 そういう全滅したパーティーの装備を頂いて、宝箱に入れてるのかもな」
三洲次 「ボロボロになった物なんて、取っても役に立たないだろうに」
ロース 「ゾンビなんかが、そんな理性的な判断してるとは思えないわ」
ランプ 「単純に気になったモノを取っていくだけなんでしょう」
サーロイン 「とりあえず、城に戻ろう」



2周目も成果無しで帰還へ......。




──── 地下10階 第一玄室(3周目)



サーロイン 「よし! 問題無し!」
三洲次 「ランプは詠唱が早いから、安心して戦えますね」
サーロイン 「うむ」
「宝箱があったぜ」



アイテムは「古びた兜」

いや、「古びた兜」って、未入手アイテムとして最初にリストアップしたので、
入手を目標にはしたけど、もう4個目だよ......。
もう要らないから、もっとまともな未入手アイテムが出てほしい......。

サーロイン 「また『古びた兜』か……」
ランプ 「ま、高く売れるから良いじゃないですか」
ブリスケット 「金だけ手に入って、今さら喜ぶのはランプはんだけでは…?」
三洲次 「……そのやりとり、もう飽きたんじゃなかったのか?」
サーロイン 「次の玄室に希望を託そう」


──── 第二玄室(3周目)




ランプ 「『極上の鎧』でした」
三洲次 「ドラゴン達の間で、鎧を集めるのって流行ってますよね……」
ロース 「最近、ロクなアイテムが出てこないわね」
サーロイン 「じゃ、今日はもう1周だけ頑張ってみるかな」



3周目も、またまた成果無しで帰還に......。




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………………………………


……………………


…………


……


──── 地下10階 ワードナ事務所

この地下迷宮は、ジャイアントやグレーターデーモンが暴れるのに十分な大きさを誇るが、
中でも地下10階特に広い空間で造られており、それはワードナの事務所も例外ではなかった。

それゆえ、事務所の中には多くの燭台があるものの、灯りは床の辺りを照らすのが精いっぱいで、
上部はかろうじて天井が見える程度の薄暗い空間が広がっていた。

今、その広い事務所の中央には、扉を背にして玉座が鎮座しており、
その玉座には書物に目を通しているワードナが、身動き一つせず静かに座っていた。


しばらくして、バンパイアロードが事務所の中に音も無く入って来ると、
背を向けている玉座の側まで歩み寄って来た......。

バンパイアロード 「ワードナ殿。
 上級魔術師協会の動きが、最近また慌ただしくなってきました」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「どうも、以前来ていたローラーレンジャーズなるハエが、
 また地下10階を飛び回っているようです」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「これまでを見ていると、まぁ……協会の手には負えないでしょう」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「今はまだ、第二玄室辺りをウロウロしているようですが、
 放っておくと、その内ここまで飛んで来るかと」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「………………………………」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「…………どうされますか?」
ワードナ 「そいつらが姿を見せなくなり、残念がってた奴がいる。
 ちょうどいい、教えてやれ」
バンパイアロード 「承知致しました。
 マイルフィックなら既に肉体は蘇生し、近くで暇を持て余しているはずです。
 声をかけておきます」

バンパイアロードは踵を返して部屋を出ようとしたが、踏み出そうとした足を止めると......

バンパイアロード 「ワードナ殿………、
 前から思っていたのですが………椅子の背を扉に向けて座らない方が良いかと………」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「闖入者が来た時に、良くないのでは……?」
ワードナ 「この背もたれは魔法を通さぬ………」
バンパイアロード 「ほぉ……盾になっていましたか…………」
ワードナ 「だいたい………このオレ様が、背後の敵に気付かぬほど、鈍感だと……?」
バンパイアロード 「失礼、口が過ぎましたな………」
ワードナ 「………………………………」
バンパイアロード 「………………………………」

バンパイアロードはさらに何か言いかけたが、思い直して口を閉じると、
そのまま部屋から出ていった。

バンパイアロードが部屋から出ていくと、事務所の中は再び静寂が戻り、
蝋燭の炎のゆらめきだけが部屋の中の変化を彩っていた........


……


…………


……………………


………………………………


…………………………………………







では、4周目です。


──── 地下10階 第一玄室(4周目)

引き続き、良いアイテムを持つ魔物が出るまで、玄室の出入りを繰り返します。


バンッ!












サーロイン 「ザコのフルコースでも頼んだっけ?」
ブリスケット 「こげにザコばかりなんは、久しぶりっすね……」
ランプ 「弱い魔物は貧弱なアイテムしか持ってませんからね。
 もっと強い魔物を狙っていきましょう!」
サーロイン 「じゃ、もう一度入ってみよう」

バンッ!



ジャイアントA シャアアアアァァァッ!!
ジャイアントB グウウウウゥゥッッ!!
ジャイアントC シュウウウウゥゥゥッ!!
   
サーロイン 「よし! 強い魔物が出てきたぞ!!」
ブリスケット 「頑張ったかいがありやした!」
ランプ 「では……」


サーロイン 「うむ、さすがランプだ!」
三洲次 「じゃ、残りは俺が(スラッ!)」


三洲次 「片付けました」
ランプ 「お! 宝箱がありましたよ!」



ランプ 「『真っ二つの剣』………」
ロース 「微妙ね」
サーロイン 「仕方ない。
 次に希望を託して、第二玄室に向かうとしよう」
「あの……先に、あたいの毒………治してくれねぇかな………」
三洲次 「……………………」




──── 第二玄室(4周目)


サーロイン 「では、こちらでも、強い魔物を狙っていこう!」
ブリスケット 「強ぇ魔物、来いっす!!」

ガチャ!



三洲次 「(無理!無理!無理!)」
ブリスケット 「(逆に強過ぎっす!)」
サーロイン 「(閉めろ!閉めろ!)」


......ソ~~..........パタン!



ブリスケット 「………ふぅ…………」
三洲次 「やれやれ………」
サーロイン 「………………………………、
 よし、もういいだろう」

ガチャ!


サーロイン 「次は……?」
??? 「久しぶりだな………」
サーロイン 「え?」



げっ?! マイルフィック!?


マイルフィック 元気だったかっ?!
 腐った玉子どもよっ!!!
サーロイン 「ぬおおおぉぉぉ!?」
三洲次 「マ……マイルフィック!!」
ブリスケット 「や、やべぇっす!!」
ランプ これは最高級のお宝ゲットのチャァーンスッ!!!
ロース 「ちょっと、ランプ!
 こんな時に、なんでそんなにポジティブなのよっ?!」
マイルフィック 「ククク………賑やかだな………。
 そんなお前らには、永遠に喋れなくなるという、
 最高の体験をプレゼントしてやろうじゃないかっ!!!
ランプ 「………モンティノ?」
ロース 「バカ!!
 『死ね』って言われてるのよっ!!!」


マイルフィック お前らとまた仕合えるこの瞬間を、
 楽しみにしていたぞっっ!!!
三洲次 「な……南無三……っ」
サーロイン 「マイルフィックだけに気を取られるなっ!!
 後続のポイゾンジャイアントにも気を付けろっ!!」
ランプ 「そいつらは私に任せて下さい!!
 皆さん、マイルフィックに集中をっ!!」
ブリスケット 「今のあっしらで、こやつに通用しやすか……」
マイルフィック 覚悟はいいかぁっ!!?
ロース 「やるしかないかわっ!!」
サーロイン 「く……くるぞっっ!!」
   
マイルフィック では最初に、口のきき方を知らない小僧おおぉぉっっ!!
三洲次 (…!?
マイルフィック まずは盗賊のおまえからだあぁぁっっ!!!
   
(盗賊) 「………………………………」
   
マイルフィック 「………………………………」
「………………………………」
マイルフィック 「……………ぇ…………?」
「………………………………」
マイルフィック 「…………小……僧…………?」
「………………………………」
マイルフィック ぁあ?! なんだっ?!
 おまえ、女になったのかっ??!
はぁあ?!
サーロイン そっちかよ………
三洲次(侍) その口のきき方を知らない小僧ってのは、
 この俺だあああぁぁっ!!
マイルフィック なにっ?!
三洲次 だあああああぁぁぁっっ!!!


マイルフィック ぐふぉおっ!!!
三洲次 「ゆ……油断大敵ぃぃっ!!!
ロース 「やったわ!!」
サーロイン 「一撃で決めたかっ?!」
   
マイルフィック 「く………くくく………っ」
三洲次 「……はぁ………はぁ………」
マイルフィック 「まさか………入れ替わってフェイントをかけるとは………予想外だったぞ……っ!」
三洲次 「転職して、互いに職業を変わっただけだっ!!」
マイルフィック 「ふふ……ふははは………、
 そういう………ことか…………」
サーロイン 「…………………………」
ランプ 「マイルフィックの身体が……煙に包まれていく……」
マイルフィック いいだろおっ!!!
 今回は負けを認めてやるっ!!!
「…………………………」
マイルフィック だが、我は不死身っ!!!
 我は不滅っ!!!
サーロイン 「…………………………」
マイルフィック 我は死しても蘇る!!!!」 
ランプ 「…………………………」
マイルフィック 小僧おおぉぉぉっ!!
 これまでの借りは、いずれ3倍にして
 返してもらうからなぁっっ!!!
三洲次 「…………………………」
マイルフィック また手合わせしようぞっ!!!
ブリスケット 「…………………………」
マイルフィック はぁーーはっはっはっはっはっ…… ! ! ! 」
ロース 「また……煙と共にかき消えていったわ……」
三洲次 「………勝った!!
 勝ったぞぉっっ!!!
サーロイン 「見事だ!! 三洲次!!」
ランプ ロイン、そこをどいて下さい!!
 まだ戦いは終わっていません!!
サーロイン 「おっと、忘れてた」


ジャイアント達 「「ギシャアアアァァァッ!!」」
   
ランプ 「これで脅威は取り除きました!!」
サーロイン 「うむ。
 では、後は………」



サーロイン 「……余裕だな」


ランプ アイテム ターーーイムッ!!!
 さぁ、桃!!
 宝箱オーーーーープンッ!!
「うぃ……じゃ……」



「開いたぜ」
ランプ 「どれどれどれどれ……!!
 おぉ!!
 鎧が入ってますよ!!」
ブリスケット 「お…、杖も入ってやすぜ」
ランプ 「よぉーーーし!!
 それでは、鑑定を!!」
ロース 「2個もあったのなら、期待できそうね!」
サーロイン 「そうだな」
三洲次 「前回マイルフィックと戦った時は、何が出ましたっけ?」
サーロイン 「『腐った皮鎧』だったな」
三洲次 「あぁ、そういやショボかったですね……。
 それで、今回は?」


ランプ 「『腐った皮鎧』………」
三洲次 はあ?!
ブリスケット 「またっすか……」
ロース 「え? なに?
 あいつ、腐った皮鎧を集める趣味でもあるの?!」
ランプ 「とんだ期待ハズレですよ………」
サーロイン 「もう1つの『つえ』は?」


ランプ 「『沈黙の杖』……」
サーロイン 「もしかして……」
三洲次 「『永遠に喋れなくなる』プレゼントって……」
ブリスケット 「これのことっすか……?」
ロース 「え? あいつ、こんなダジャレ言うために出てきたの?」
サーロイン 「いや……違うと思うけど………ってか、そう思いたい………」


第二玄室まで来たし......、


.... 本日はここまで!





名前 LV H.P. コメント
サーロイン 12 95 18 16 15 16 14 11 1 0 このままH.P.2桁だと、地下10階は厳しいか?
三洲次 12 124 17 14 14 16 16 18 3 3 やっと彼もレベル13が見えてきた。
15 155 18 18 17 17 15 17 0 0 どう見ても、やっぱり侍が似合っている能力だ。
ロース 14 155 14 18 18 17 18 10 0 2 邪魔する奴はティルトウェイト一発でダウンさ♪
ランプ 19 88 18 18 18 16 18 14 0 9 アイテムの売却でひたすら金だけ溜まっていく。
ブリスケット 13 112 14 18 18 15 16 12 3 4 力が弱い。美濃と交代かな?美濃も力が弱いか…

 

──── ギルガメッシュの酒場 夕食時....

今宵も酒場の片隅には、鎧を脱いで軽装になった屈強な肉体の戦士、
旅の時と同じローブに身を包んだままの長身の魔法使い、
アルバと呼ばれる内着だけになってくつろいだ司教......等々、
数多くの冒険者たちが、ブリスケットを取り囲んでいた。

彼らを前に、ブリスケットは手持ちの袋から「紙」と「ハサミ」を取り出すと......

ブリスケット 「え~、こちらに取り出しましたるは、真っ白な紙と、
 それを切るハサミでごぜぇやす」
客たち 「「…………………………」」
ブリスケット 「今宵はこのハサミで紙を切りやして、皆さまのご希望の形をお作りいたしやす」
客たち 「「ほぉ~……………」」
ブリスケット 「では、何か切ってほしいご注文はありやすか?」
客A 「グレーターデーモンっ!!」
ブリスケット 「はい、お客様のご注文です。
 『グレーターデーモン』でごぜぇやす。
 では、さっそく切ってまいりやしょう」
    チョキチョキチョキ……
客たち 「「…………………………」」

      ………

      ………………

ロース 「今日もご盛況ね」
ランプ 「何ですか、あれ?」
三洲次 「『紙切り』っていう日本の芸です」
サーロイン 「あれも日本の芸なのか?」
三洲次 「えぇ、神道の儀式から派生したらしいですよ」
ロース 「ふ~ん……」
三洲次 「1回ハサミを入れるだけで形を作る、一筆書きみたいな切り方がウリです」
サーロイン 「ほぉ~……リクエストを聞いてたが、リクエストに応えるのが難しそうだな」
三洲次 「あと、切ってる間お客を退屈させちゃいけないから、話術も無いとダメですね」
ロース 「ブリ助って、そういうのどこで覚えてきたのかしらね……」
「ガツガツガツガツガツッ!!」

     …………………

     ………

ブリスケット 「ところで、ここギルガメシュの酒場ってぇのは、いろんなお客さんがおりやすよねぇ……」
    チョキチョキチョキ……
客たち 「「…………………………」」
ブリスケット 「酒を飲みながらカードで賭け事をする人とか、
 店内で喧嘩を始める荒くれ者とか、
 酔い潰れて寝てる旅人とか………」
    チョキチョキチョキ……
客たち 「「…………………………」」
ブリスケット 「で、まぁ、半年ほど前でしたかねぇ……、
 あっしがいつものようにですねぇ、
 『何か切ってほしいリクエストはありやすか? なんでも切りますよ!』
 って聞いたんですわ……」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「そうしたら、カードで賭け事をしていた人がこっちに来て、手を差し出すんすよ……」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「『何すか?』と思い、そやつの手を見たら、カードの束が乗ってやしてねぇ……」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「どうもカードをシャッフルして(きって)ほしいんだそうで………」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「ハサミを持ったあっし相手に、勇気ありやすよねぇ」
客たち 「ぷっ……」「はは……」
ブリスケット 「で、また『他に切ってほしいものはありやすか?』って聞いたら、
 今度は喧嘩をしていた荒くれ者の2人が、突然こっちに向かって来たんすよ………」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「『な、なんすか?』とビビッてたら、突然2人揃って大声で………」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「『『こいつとの縁を切ってくれっ!!』』って」
客たち 「クク……」「ハハハ……」
ブリスケット 「まぁ、ハサミじゃ切れねぇんで、
 無視して『切れるのは紙だけでっせ、他に切ってほしいものはないっすか?』って聞いたら、
 今度は酔い潰れて寝てた旅人が、ガバッ!と起きて……」
    チョキチョキチョキ……
ブリスケット 「『長旅で伸びたから、頼むよ!』
 いや、その髪じゃなくてですねぇ………」
客たち 「ふはは……」「くっくっくっ……」
ブリスケット 「なんて喋ってる内に、グレーターデーモンが出来上がりやした。
 ………はいっ!!」

ブリスケットが差し出した切り絵は、
巨大な羽を持ったグレーターデーモンのシルエットであった。

客たち 「「おおおぉぉ~~っ!!パチパチパチ!)」」
   
ブリスケット 「さて、こちらはどなたのリクエストで?」
客A 「俺だ!」
ブリスケット 「では、このグレーターデーモンはお土産にお持ち帰りくだせぇ」
客A 「お、サンキュー」

客は切り絵を受け取るのと同時に、ブリスケットの手に何かを手渡した......。

ブリスケット 「いつもありがとうごぜぇやす」

      …………

      ……………………

ロース 「あら……今、何か受け取った?」
三洲次 「切り絵をもらったお礼のチップですよ」
ランプ 「チップ………!」
「ガツガツガツガツガツッ!!」
サーロイン 「そう言えばブリ助は、パーティーに参加する前って、酒場で芸を見せて稼いでたな」
ロース 「誘うとパーティーが一気に金持ちになるだろうからって、ランプが声をかけたけど、
 毎日飲んで使ってたから、所持金がパーティーで一番低かったわね」
三洲次 「ありましたね、そんなこと」
サーロイン 「冒険が終わっても、ブリ助ならあれで食っていけそうだな」
ランプ 「そうか……よし! 私も何か芸を覚えますか!」
ロース 「あなた、お店を開くんじゃなかったの?」
三洲次 「どうせ小遣いが欲しくなっただけなんだろ?」
ランプ 「いや、そんなことは………ちょっとはあるけど………」
   

 

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【更新履歴】
2021年 8月21日:一部の表現を見直しました。
2021年 6月 5日:読むのにかかる所要時間(目安)を掲載しました。
2020年11月21日:次ページへのリンクを設定。
2020年11月14日:新規公開。