35.失敗の原因

【登場人物】  
ロイン 「ローラーレンジャーズ」リーダーの魔法使い。
三洲次 密航してきた日本男児の盗賊。発音は「みすじ」。
訓練所を首席で卒業した侍の少女。すぐ暴れる。
ロース こんな名前だが細身の美人僧侶。エルフだしね。
ランプ お金一筋のエルフの司教。自分の店を持つのが夢。
ブリスケット 日本オタクのエルフ。侍で、あだ名は「ブリ助」。

読了時間 (目安):約8分



──── ギルガメッシュの酒場 早朝

三洲次 「ふぁ~あ……、おはよぉ……」
ランプ 「今日もドンジリですよ」
三洲次 「言うなって……」
ロース 「おはよう、三洲次。
 何飲む?」
三洲次 「じゃ、眠気覚ましにコーヒーでも…

  ガガガガガガガ……ッ!!

三洲次 「うわああぁぁっ!
 なに?! なにっ?!
 敵か?!敵襲なのかっ?!」
ロース 「落ち着いて、三洲次」
ブリスケット 「桃っちっすよ、桃っち」
三洲次 「え? 桃??
 …桃が、どうしたの?」
「いい食べ方を見つけた」
三洲次 「食べ方?
 ………何の話し?」
「こいつ」
三洲次 「それ、ビールを入れるピッチャーだな。
 空っぽだけど…」
「ここに、ミルクとバナナを入れる」
三洲次 「ほぉ?」
「で、このカシナートの剣で…

  ガガガガガガガ……ッ!!

「…かき混ぜると、バナナのジュースができあがる。
 バナナも一緒に飲めるから、
 これで朝からダルくても、ノープロブレムだぜ」
三洲次 「……………」
「……ングングング………プハァ!
三洲次  ひそひそ…
(なぁ、あれ、魔物を切り刻んでる剣だろ?
 そんなもので、口に入れるもの作って、大丈夫なのか…?)
ロース  ひそひそ…
(知らないわよ。
 私も、時々桃の神経についていけないわ…)
「三洲次も飲むか?」
三洲次 「えっ?!
 い、いや……さっき、コーヒー頼んだから……」
「そうか?
 でも、この剣、すっげぇ便利だな。
 気に入ったぜ!」
ロイン 「……高名な剣なのに……台所用品に使うなんて……」

さて、腹ごしらえを終えたら、今日も地下へと潜っていきます。



と、言う訳で、地下9階



ゴーゴン 「ブルルンッ(笑)!!」
ブリスケット 「うわあぁっ!!
 の、乗っかるなぁっ!!!」
ロース 「先に行ってるわよ」
ブリスケット 「ちょ!ま…、待って…!!」




ロイン 「これは、幸先がいいな」
「あたいに任せな」
ロイン 「え?」


シーフA ごぉばばばぁばぁばぁあああぁぁっっっ!!


シーフB ふぅごげぇげぇげぇげげげええぇぇっっ!!


シーフC ぅあごぉごぉごぉごごごおおぉぉっっ!!!

  ……じょびゃばゃばゃばゃあああぁぁっっ……
   
  ……ほわばぁばぁばぁばばばばああぁぁっっ……
   
   
三洲次 「……すげぇな………」
ロイン 「片っ端から一撃で倒していくな…」
ランプ 「無双状態ですね……」

そう....、桃がカシナートの剣を使いこなせるようになった(?)ら、
もう、なんて言うか、桃が一人で無双状態




出てくるモンスターを、片っ端から一撃で倒していく。

地下9階は、敵が1グループ少数で出てくることも多いので、
カティノ(魔物を眠らせる魔法)やモンティノ(魔法封じの呪文)で無力化した後に、
桃が片っ端からぶっ殺していく戦法で充分やっていけます。

そのため、7~8割方の敵は、桃が一人で倒している状態。

カシナートを手にした桃に、もはや倒せないモンスターはいない


ランプ 「獅子奮迅と言いますか……」
三洲次 「鬼神が行くが如し、と言うか……」
ロース 「聞こえるわよ……」


おかげで、全然危なげなく戦闘をこなしていけます。


一方で、アイテムはロクなものが手に入らない......。

ぶっちゃけ、ガラクタばかり......。


──── ボルタック商店


店員(女) 「あら、ランプ社長さん!
 またいらしたのね!」
ランプ 「誰が社長ですか…。
 しかし、この店はいろんな店員が働いてますね。
 女性の店員まで居るとは、思ってませんでしたよ」
店員(女) 「ウチは複数人で回してるのよ。
 それより…、また、いろいろゲットされたの?」
ランプ 「えぇ」
店員(女) 「さすが社長さん!」
ランプ 「ガラクタも多いですけどね…」
店員(女) 「ん~、どれどれぇ……。
 また『なまくらな剣』を見つけたのね。
 あら!
 『虚ろの盾』なんて、珍しいじゃない!」
ランプ 「ガラクタでしょ?」
店員(女) 「えぇと…、あ、これは元はアレね。
 じゃ、『なまくらな剣』は500G.P.、
 『虚ろの盾』は4,000G.P.で、どうかしら?」
ランプ 4,000G.P.?!
 まともに装備もできないガラクタがっ?!
 そもそも、もうダメになった『なまくらな剣』だって、
 500G.P.も払う価値あるんですか?」
店員(女) 「これ、元はそれぞれ『真っ二つの剣』と『守りの盾』ですわ。
 だから、呪いを解いて鍛え直せば、4,000G.P.と250,000G.P.で売れるから、
 十分元が取れるのよ。
 買取価格は、材料費って考えてもらうのが、近いかしら?」
ランプ 「へぇ…、そういうことですか。
 そう言えばボルタックって、装備の呪いを解く商売もしてましたね」
店員(女) 「ウチのウリの1つよ」
ランプ 「それで、この前の『なまくらな剣』も買い取ったんですね」
店員(女) 「えぇ、そうよ。
 あ!
 ちょうど今、この前の『なまくらな剣』を鍛え直してるところよ。
 ねぇ!!ちょっとっ!!」
店員(男) 「はい?」
ランプ げ!! あの下ネタの店員!?」
店員(女) 「この前頼んだ 剣 だけどぉ、直し終わったぁ?!
 もともと『真っ二つの剣』だったやつぅ?!」
店員(男) 「あ~、すいませ~ん…、
 鍛え直すの失敗しちゃいましてぇ…」
店員(女) 「えぇ、失敗したのぉ?!
 で、どうなったのよ?」
店員(男) 「『真っ二つの剣』じゃなくて、『真っ裸の剣』になっちゃいました」
ランプ 「どんな剣だよ……」
店員(女) 「えー?! なによ、その剣??」
店員(男) 「どんな防具を装備しても、ACが10のままになる剣です」
ランプ 「そっちの方が、作るの難しいだろ…」
店員(女) 「じゃぁ、もう1つ頼んでおいた『災いのメイス』は?
 もともと『力のメイス』だったやつ?」
店員(男) 「あれも失敗しちゃいましてぇ…、
 『力のメイス』じゃなくて、『痴漢のメイス』になっちゃいました」
ランプ 「何をどう失敗すると、そうなるんだよ……」
店員(女) 「えー?! なによ、そのメイス??」
店員(男) 「プリーステスに倍打の効果があります」
ランプ 「なんだよ、そのニッチな倍打効果は……」
店員(女) 「もぉ~、しょうがないわねぇ…。
 あ! 社長さん?
 『痴漢のメイス』にご興味ありません?」
ランプ 「ないです」
店員(女) 「そう…、残念ね……」
ランプ 「……………待って下さい…!」
店員(女) 「あら、やっぱり興味がおありなのね!
 だって、世界に1つしかない武器ですものね!
 さすが社長さん、お目が高いわぁ!」
ランプ 「そんな武器、世界に1つあるだけでも余計ですよ……。
 いや、そうじゃなくて、
 さっき、この『虚ろの盾』って、
 もともと『守りの盾』って言いませんでしたか?」
店員(女) 「えぇ」
ランプ 「じゃぁ、鍛え直したら、『守りの盾』になるんですね!?」
店員(女) 「えぇ、そうなるわ。
 店の棚に並べたら、買ってくださる?」
ランプ 「もちろんです!!
 そんなレアな盾が手に入るチャンス、逃すはずがないです!!」
店員(女) 「じゃ、これは超特急で鍛え直しておくわね。
 いつもはけっこう日数がかかるんだけど、
 上得意の社長さんだから、と・く・べ・つ・よ!
 明日の夕方にでも 来らしてね」
ランプ 「はいっ!! 絶対に来ます!!」


……………………


…………


地上でそんなやりとりがされている頃、一方 地下では......


──── 地下10階 上級魔術師協会 本部

アーチメイジ 「ローラーレンジャーズ全滅の連絡は、まだないのか?」
ハイウィザード 「はい、申し訳ありません」
アーチメイジ 「しぶとい奴らじゃのぉ…」
ハイウィザード 「こうなったら、我が配下のレベル7メイジを大量に引き連れて、
 奴らにぶつけてやります!!」
アーチメイジ 「待て、待て」
ハイウィザード 「はい?」
アーチメイジ 「あのな…、そんなんだから、ダメなのじゃ。
 襲撃が失敗し続けている原因を分析せずに挑んでも、
 また返り討ちにあうだけじゃぞ?」
ハイウィザード 「はぁ…」
アーチメイジ 「これまでの襲撃が失敗してきた原因で、
 思い当たるフシは無いのか?」
ハイウィザード 「そうですね……。
 報告では、やたらめったら強い侍の小娘が居るとか…」
アーチメイジ 「ほぉ…」
ハイウィザード 「その小娘一人で、ほとんどの魔物を倒しているそうです」
アーチメイジ 「原因がそれならば、どうすれば脅威を取り除けるかは、もう明白じゃろ?」
ハイウィザード 「奇襲で、その小娘を集中攻撃し、殺せばいいのですな?」
アーチメイジ 「その通りじゃ!」
ハイウィザード 「では、すぐに大量のモンスターを集め、
 奇襲でそのように攻撃するよう、指示を致します!!」
アーチメイジ 「うむ」



翌日......



ブリスケット 「む…、また、こやつですか?」
ロイン 「先制できたのはラッキーだ!
 やってしまえ!!」
ブリスケット 「てやああぁぁっ!!」


ブリスケット 「倒れねぇっすか!?」
三洲次 「ブリ助は、素早いのはイイんだけどなぁ…」
ロース 「ま、アンデッドなら…!」
ランプ 「私たち聖職者に任せて下さい!」



ロース 「………………」
ランプ 「………………」
三洲次 「もしかして、地下9階に来てから、ディスペルって1回も成功していないのでは?」
ロイン 「もう、桃に頼るしかないな…。
 よし、いけ! 桃!!」
「死ねえええぇぇぇっっ!!!」
三洲次 「アンデッドって、もともと死んでね?」


ロイン 「さすが」
三洲次 「アンデッドは二度死ぬ…か」

その後も戦闘を続けるが、やはり....、




桃が無双状態である。

そして、やっぱりアイテムの方も、

けん
よろい
たんけん
かわのよろい

などなど、今さら大して金にならない初期装備ばかり、たくさん出てくる。

そろそろ新しい非売品のアイテムが欲しいなぁ......。


そんな状況が続いているさ中......、


──── とある玄室.....

??? 「お前らっ!!! よく聞け!!
 もうすぐ、懸賞金のかかったローラーレンジャーズが、
 この玄室にやってくるっ!!!
 いいかっ!!
 奴らが入って来たら、侍の小娘だけを狙え!!!
 その小娘さえ倒せば、脅威は取り除いたも同然だっ!!!
 大丈夫っ!!
 これだけの数を揃えたのだっ!!!!!
 これだけの数で集中攻撃をすれば、所詮は小娘!!!
 絶対に奇襲中に殺せるっっ!!!!
 今日こそ、奴らの進撃を止めるのだっっ!!!」

──── 場面は元に戻り……


シュルルル....シュタッ!

ロイン 「なんだっ?!」
??? 「ローラーレンジャーズと、お見受けしたっ!!!」


ニンジャ 「拙者!レベル8ニンジャ!!
 そなたらの命と懸賞金、拙者が頂戴いたす!!!」
三洲次 「なんかご丁寧なご挨拶で」
ロイン 「こんな奴まで懸賞金目当に出てくるのか……」

ってか、レベル8ニンジャがイラスト付きで登場するのは、これが初めてかも。

ブリスケット 「てりゃっ!!」
ロース 「とおっ!!」



ニンジャ 「ぐはあぁっ!!」

弱かった......。


ランプ 「ブリ助とロースでは、2人でやっと1人倒せるぐらいですね」
三洲次 「ブリ助の3回ヒットとか、それなりに強いと思うんですけどね」
   
??? フハハハハハハハ!!!!!
   
ロイン 「な、なんだっ?!」


シュルルル....シュタッ!


ニンジャ 「バカめ!!!!
 そっちは残像ぞぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉおおおぉぉぉっっ!!!!
バカはてめえだあああぁぁっ!!!


三洲次 「何がしたかったんだ、こいつ……?」
ロース 「おとなしく出て来なければ良かったのに、ね」

なんか突然のレベル8ニンジャ2連戦を挟みつつ、
さらに何回かの玄室をこなしていくと....、


......シュートのある玄室前まで来ました。

この玄室を抜けると1周するので、今日はここまでかな?


ブリスケット 「じゃ、いつも通り、入りやすぜ」
ロイン 「うむ」

バンッ!



??? 「死ねえええぇぇっっ!!!
 小娘えええぇぇっっ!!!」
ロイン 「え?」


どわあああぁぁぁっっ!!!

なんだこの大量の敵はあああぁぁっっ!!??


「ぐはあぁっ!!」


「ぶはあっ!!」


「ぐおぉっ!!」


「ぎぃいっ!!」


「ぎひっ!!」

しかも、桃を集中攻撃!!!

止めて!!!
止めてえええぇぇっっ!!!


プリーストA 「ふははははははっ!!!
 今日こそは、これまでの恨みを晴らしてやるぞぉっ!!!」
ロース 「きゃあっ!」
プリーストA 「あれ?」


プリーストA 「おいっ!! 違うよっ!!!
 そっちの娘じゃない!!!」 


プリーストA 「そっちも娘だけど、そうじゃないって!!!」


プリーストA 女性ですらねえええぇぇっっ!!!


敵の奇襲が一通り終わったら、前衛はこんな状態に。


奇襲は、途中から攻撃が分散されたけど、
それでも桃はフルにあったH.P.が、アッと言う間に半分未満に。

危なかった......。

てめえぇら全員っっっ、
 ぶっっ殺してやるっっっ!!!
三洲次 「桃、落ち着け! 落ち着けって!!
 数が多過ぎる!!
 打撃でどうこうしようとしないでっ!!」
放せえええぇぇっ!! 三洲次ぃぃっ!!!
 こいつらを片っ端からあの世に送ってやるんだあああぁぁ!!!
三洲次 「ロイン!! 早く!!早くっ!!」
ロイン 「マ、マカニトっ!!」



無事に、死者を出さずに勝利。

いやぁ、一瞬だけどドキドキした。

しかもこの時は、マディの使用回数が0回になっていたんだっけ。
マディが切れたら、帰らないと危ないな....。
反省しないと。



ロース 「残ってる回復呪文で、できる限りの応急手当はしたわ」
ロイン 「ご苦労。
 では、ちょうど一周となったし、
 ここで切り上げるか」
三洲次 「そうですね」
ランプ 「あ!」


ランプ 「お先ですっ!!」
ロイン 「え? どうした、ランプ?」
三洲次 「なに慌ててるんですかね?」
ロイン 「さぁ…?」

………………

………


──── ボルタック商店

ランプ 「『守りの盾』、できましたかっ?!」
店員(女) 「あら、社長さん。
 来たわね」
ランプ 「で?! 『守りの盾』は?!」
店員(女) 「ちょっと待ってね。
 ねぇ!! ちょっと!!」
店員(男) 「はい?」
ランプ げぇっ!!
 あの下ネタの店員が担当したのっ?!
 ……ま……、まさか………」
店員(女) 「頼んでおいた盾だけど、直し終わったかしらぁ?!」
店員(男) 「あ~、すいませ~ん。
 鍛え直すの 失敗しちゃいましてぇ…」
ランプ 「………………」
店員(女) 「え~、またなのぉ?!
 それで、どうなっちゃたのよぉっ?!」
店員(男) 「『守りの盾』じゃなくて、『モリマ○の盾』になっちゃいました」
ランプ 「誰か止める奴はいなかったのか……?」
店員(女) 「社長さん…、申し訳ないわぁ。
 よく分かんないけど、直すの失敗しちゃって、
 別の盾になっちゃったみたいなの…」
ランプ 「どう考えても、あの店員に任せたことが、失敗の原因だ……」
店員(女) 「貴重なアイテムだったのに、ごめんなさいねぇ」
ランプ 「はぁ~あ……」
店員(女) 「あら、諦めがつかないなら、
 せめて『真っ裸の剣』と『モリマ○の盾』を買って、冒険に出たら?」
ランプ 「ただの変態じゃんっ!!!」


……………………


…………



──── 地下10階 上級魔術師協会 本部

ハイウィザード 「申し訳ありません、
 奇襲は失敗に終わりました」
アーチメイジ 「失敗の原因は?」
ハイウィザード 「そうですねぇ……、
 襲った奴らがバカだったことでしょうか?」
アーチメイジ 「アホか」



「36.地下10階からの刺客」へ



名前 LV H.P. コメント
ロイン 13 77 17 18 12 18 17 15 0 なんか次のレベルアップが遠い…。
三洲次 14 53 18 16 9 14 18 17 3 本当にカシナート以外 ロクなの出ねぇ。
12 94 18 18 18 18 17 17 0 地下9階の敵なら、全て一撃で倒していく。
ロース 13 104 17 18 18 18 18 14 2 僧侶の直接攻撃は、もう頼れないかも。
ランプ 13 46 14 18 18 14 16 10 3 手に入ったアイテムのリスト作ろうかな。
ブリスケット 12 100 17 17 15 18 18 12 2 素早いからカティノ唱えてた方が役に立つ。

 


【更新履歴】
2021年 7月31日:読むのにかかる所要時間(目安)を掲載しました。
2019年 8月18日:全体的に文章と台詞を推敲。
2019年 8月 4日:次ページへのリンクを設定。
2019年 7月28日:新規公開。