20.名探偵サーロイン・ホームズ(後編)

【登場人物】  
サーロイン ロイヤルレンジャーズのリーダー。サーは敬称。
三洲次 元盗賊だった日本男児の侍。発音は「みすじ」。
接近戦最強のくノ一。でも細かい事は大嫌い。
ロース こんな名前だが細身で美人なエルフの女魔法使い。
ランプ 財宝一筋なエルフの司教。パーティーの知恵袋。
ブリスケット 日本オタクのエルフの僧侶。あだ名は「ブリ助」。

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━━━ 前回までのあらすじ

迷宮1階を探索中のとある冒険パーティーが突如襲撃を受けた。

運良く凶行を逃れたエレンという名の魔法使いは、仲間が死に際に発した「まだらの紐」という言葉を胸に、ただ1人だけ地上へと生還する。
そしてロイヤルレンジャーズ仲間の救助を要請して来たのであった。


さっそく調査に乗り出したパーティーは、フロアの南側のエリアで扉の前に垂れ下がるを発見。
その紐を見たサーロインは、海賊が冒険者たちの力量を調べるために、紐を通してアナコンダに奇襲をさせていることを見抜く。

はたして、その推理通り現れたアナコンダを返り討ちにすると、ロイヤルレンジャーズはエレンたちの仇を取ったのであった。


だが、アナコンダを送り込んで来たのは、海賊の中でも一番下っ端ガリアンレイダー

襲撃の指揮を執っていた発案者は他にいると踏んだサーロインたちは、
全てを白日の下にさらすべく、再び現場へ向かうのであった......。

 



【目次】

1.鷲の眼




1.鷲の眼




━━━━ エレンの仇を取ったその日の夜
     迷宮1階の通路.....


酒場でになるのを待ったパーティーは、再び凶行のあった部屋へと向かって出発した。


フロア南側エリアにある東西に長い通路を進んで行くと......、


...その途中で!!

サーロイン 「む!?」
ブリスケット 「この音は…?!」


突如、通路に低い笛の音が響いた!!

ロース 「あの時と同じ笛の音だわ!!」
三洲次 「近くに海賊達が居るぞっ!!」
ランプ 「あ、すいません、私です」
ランプ 「いや、前回ガリアンレイダーの死体から取って来た笛を試しに吹いてみただけで……」
ブリスケット 「なしてこんな所で吹くんすか…?」
ランプ 「いえ、どうしても吹いてみたくて、ちょっと……」
三洲次 「なんだ、そりゃ?」
サーロイン 「それ、アナコンダに聞こえる笛だろ?
 そんなの吹いたら……」



サーロイン 「……ほら、集まって来た」
三洲次 「なんだ、そりゃ?」
ブリスケット 「お!
 ってぇことは、これで魔物をおびき寄せ放題じゃねぇっすか!
 経験値とお金を稼ぎ放題でっせ!」
サーロイン 「なるほど!!
 そういう発想があったか!!」
ランプ 「それは無理です」
サーロイン 「なんで?」
ランプ 「破損率が高いらしく、今使ったら『壊れたアイテム』になっちゃいました」
三洲次 「なんだ、そりゃ?」
ブリスケット 「使う前に売りゃぁ良かったすね……」
ロース 「ねぇ、それよりこいつら、どうするのよ?」


アナコンダ達 「「シャァーーーッ!!」」
   
サーロイン 「しょうがない。
 こいつらに罪は無いけど、こちらを襲おうとしているなら、倒すか」
三洲次 「やれやれ……」
サーロイン 「ランプ、お前の責任だ。
 寝かせてくれ」
ランプ 「はい……」







三洲次 「なんだったんだ……」


とりあえず通路を進み......、


...前回入った部屋の前へ。

ガチャッ...        ← 扉を開けた音


サーロイン 「おや?」
ロース 「どうしたの?」
サーロイン 「ガリアンレイダーの死体が無くなっている」


部屋の中には昼間と同じ木製のテーブルとイスがあったが、
イスの上に放置していたガリアンレイダーの死体は姿形も無く消えていた。

三洲次 「魔物に喰われたのか……」
ランプ 「あるいは海賊達が戻って来て、死体を埋葬する為に移動したのか……」
サーロイン 「ランプの方が正しいだろうな」
ブリスケット 「なぜっすか?」
サーロイン 「代わりに、奴らの手土産が置いてある。
 人が来た証拠だ」


サーロインがテーブルの奥の方を指差すと、そこには宝箱が置かれており、その宝箱の周囲には......



...アナコンダが巻き付いていた。

ブリスケット 「アナコンダに縁のある1日っすね」
三洲次 「あれも罠かな?」
ランプ 「罠の割には堂々と置いてありません?」
ロース 「アナコンダも中に入れとけば罠っぽいのに、なんで外に巻いてあるのかしら?」
サーロイン 「中に入れたら窒息するか、その前に罠を誤って動かすだろ」
ロース 「そうかも知れないけど……」
ランプ 「ま、せっかくなので、お宝は頂いちゃいましょう!」
三洲次 「じゃ、アナコンダを倒すから、奴らを寝かせてもらえます」
ロース 「分かったわ」


ロースがカティノを唱え始めるのを確認し、三洲次は敵が寝ると同時に倒すため、
宝箱に巻き付いているアナコンダにゆっくりと近付いてく......。


ロース 「あら……」
三洲次 「へ…?」


アナコンダA シャアアアァァァッ!!
三洲次 ひゃあぁあっ?!
   
ロース 「あら、あら、あらぁ~~」
サーロイン 「おい、コラ」
「しょうがねぇ…(スラッ!)




サーロイン 「とりあえず片付いたな」
ランプ 「では、宝箱を開けましょう!!
 桃、出番です!!」
「うぃ~す」



「あ~~、こりゃ罠は無いぜ」
サーロイン 「…………どう思う?」
三洲次 「どう思うって?」
サーロイン 「罠は無いと思うか?」
三洲次 「どう考えても海賊たちの罠でしょ。
 なんで『無い』なんて結論になるんだ?」
ぁああ?!
 あたいの判定に文句があんのかっ!?
サーロイン 「しょうがない、ブリ助、カルフォを頼む」
ブリスケット 「承知!」



サーロイン 「…………どう思う?」
三洲次 「どう思うって?」
サーロイン 「メイジブラスターだと思うか?」
三洲次 「いやぁ~、ワードナの迷宮の時を考えると、
 こんな高度な罠がこんなフロアにあるとは思えないですけど」
ロース 「ねぇ、宝箱の方が本命の罠なんじゃないの?」
サーロイン 「識別し難い罠を仕掛けてある、ってこと?
 海賊どもにそんな技術があるかなぁ?」
ブリスケット 「で、どうしやすか?」
サーロイン 「もう1度カルフォをしてみるか?」
ブリスケット 「レベル2の呪文ってぇ、あっしらはまだ贅沢に使えるほどの回数は無ぇですぜ?」
サーロイン 「まぁ、そうだよなぁ……。
 よし!
 メイジブラスターでの解除に挑戦するか!
 仮にカルフォが違っていても、桃が正しい可能性もあるからな!!」
三洲次 「桃がカルフォより正しい?
 それは……」



ふごぉっ!!
三洲次 「…絶対無いでしょ」
サーロイン 「やっぱり?」


おいおい........「しらべる」と「カルフォ」の両方とも間違いだったのかよ......。


「いちちち……」
三洲次 「2ダメージ程度で良かったな」
サーロイン 「ブリ助、桃を治療してくれ」
ブリスケット 「へい」

これ、罠が「石弓の矢」だったから良かったものの、
「ガス爆弾」とかだったら目も当てられない事態になっていたぞ......。

の「調べる」が頼りにならないのはもう仕方ないんだけど、
カルフォもあてにならないって、どうすりゃいいんだ??


ってかさぁ、カルフォ成功率95%って、
だいたい70%ぐらいじゃね?
          (支離滅裂な思考・発言)


なお、宝箱の中は「だんびら」でした。


さて......、


...治療と鑑定が済んだら、とりあえず先に進みましょう。
まずは、前回到達した部屋に再度入ります。

サーロイン 「海賊どもが時間潰しに使っていた部屋をもう一度見てみよう」


ガチャッ...!


6人は扉を開けて中に入ったが、そこには誰も居なかった。

三洲次 「誰も居ないですね」
ブリスケット 「空振りやしたか」
ランプ 「やっぱり海賊たちは引き揚げたのでは…?」
ロース 「でも、それならさっきの宝箱は何だったの?」
サーロイン 「ま、また戻って来る可能性もある。
 しばらくここで待機していよう」


と、その時だった!

入って来たばかりのがものすごい勢いで開けられた!!

サーロイン 「む…!?」
三洲次 「なんだ?!」



そこには金色に輝くフェイスベールを付けて紫色のローブを身に纏った男が2人
その後ろには緑色の海賊服を着て、手に持ったカットラス(海賊刀)をぶらぶら振ってる6人の男たちが居た。

前列に立っている2人のガリアンメイジを見ると、フェイスベールの奥から邪念に満ちた瞳が覗いていた。
その目でロイヤルレンジャーズの6人を品定めしている様子は、狩りに慣れた凶暴な鷲(わし)の様でもあった。

メイジA 「誰だおまえらは?!」
メイジB 「さては貴様ら、『ロイヤルレンジャーズ』とか言う奴らか!?」
サーロイン 「だとすれば、何ですかね?」
メイジA 「隣の部屋に居た我らの仲間を殺したのは、おまえらだな!?」
サーロイン 「天災のせいか、今年は少し寒いですな」
メイジB 「我々が育てたアナコンダを殺したのも、おまえらだろ?!」
サーロイン 「しかし幸い麦は豊作だそうです」
メイジA 「そうか!
 我々を愚弄する気だな?!
 だが、その答え方は『Yes』と言っているのと同じだ!!」


ガリアンメイジの1人がサーロインの眼前まで近寄ると、獰猛な鷲を思わせる目で睨みつけながら言った。

メイジA 「我々はおまえらを知っておる。
 人の宝を盗むコソ泥どもだ!!」


サーロインは微笑んだ。

メイジA 「このチンケな盗っ人が!!」


サーロインさらに微笑んだ。

メイジA 「王国に尻尾を振る浅ましい飼い犬め!!」


サーロインは大声で笑った。

サーロイン 「なかなかうまいことを仰るお方だ。
 さて、お帰りの際は忘れずに扉を閉めていってもらえますか?
 他の魔物が入って来ると邪魔なので」
メイジA 「よく聞け!!
 私が作った罠を次々と破っていい気になってるようだが、我々を甘く見るなよ!!
 おい!!
 こいつに見せてやれ!!」


声を掛けられたガリアンレイダーは部屋の隅に行くと、木箱に立てかけてある鉄製の火掻き棒を両手で掴み......、

レイダーA 「ふぬうぅんんっ!!」


...それをU字に折り曲げた!!

メイジA 「どうだ?!
 我々の力を見たか!?」


ガリアンレイダーは捻じ曲げた火搔き棒を放り投げると、
それは甲高い金属音を部屋に響かせてサーロインの足元に転がった。

その間、サーロインは何の感情も示さない表情で......、

サーロイン 「……………………………………」


...それを見届けていた。

メイジA 「おまえらなど簡単に捻り潰すことが出来るのだ!!
 分かったか!?」
サーロイン 「1つだけ分からないことがある」
メイジA 「なに?!」
サーロイン 「昨晩罠に嵌めたパーティーの死体は、どこにやった?」
メイジA 「そうか、おまえらはあいつらの死体を回収しに来た救助パーティーだったのか。
 だが、残念だったな!!
 あいつらは今頃ジャイアントスラグの腹の中だろうよ!!」
サーロイン 「ジャイアントスラグ……?
 ふむ、となると………このエリアの端にある牢屋か……。
 そうなんだな?」
メイジA 「天災のせいか、今年は少し寒いな!」
サーロイン 「あそこは、おまえらが反逆者などを閉じ込めておく場所なんだろ?」
メイジA 「だが麦は豊作だそうだ!」
サーロイン 「その答え方は『Yes』と言ってるのと同じだよ」
メイジA 「なんとでも言え!!
 どの道、貴様らもそこへ行くのだからなっ!!」
サーロイン 「ま、これだけ分かれば十分だ」
メイジA 「冥途の土産が出来て嬉しいか?!」
サーロイン 「なんとでも言え、
 どの道、そこへ行くのは……」



メイジ達 「「ひぃぎゃあああぁぁぁっ!!」」
サーロイン 「…おまえらの方だからなっ!!
三洲次 「エレン達の恨み、思い知ったか!!」
   
レイダーA 「ひぃいっ?!」


サーロイン 「どうも我々との実力差が、まだ分かっていないようだな……」


そう言いながら、サーロインは先ほどの火掻き棒を両手で拾い上げると......、

サーロイン 「あんなに焦って逃げ出さなければ、あいつのへなちょこの腕より、
 もうちょっとまともな腕力を見せてやったのに」


...と言い、あっさりと火掻き棒真っ直ぐに戻してみせた。

そして今度は、サーロインが火掻き棒海賊達の近くに放り投げると、
残されたガリアンレイダー達は何とも言えない表情を見せた。

レイダー達 「「ぅぅ……!?」」
   
サーロイン ロース、片付けろっ! ! !
ロース オッケーッ!!


レイダー達 「「ふぎゃあああぁぁぁっ!!!」」



三洲次 「これで全てのケリが付きましたね」
サーロイン 「うむ」
ブリスケット 「全貌が分かりゃぁ、エレン嬢の心も少しは軽くなるんでは?」
サーロイン 「ただ、まだ仲間の消息が確認出来ていない」
   
ランプ 「桃、桃!」
「あ~?」


ランプ 「こっち、こっち!
 あいつらが運んでいた宝箱があったから!」
「あんだよ、面倒くせぇなぁ……」
ランプ 「いいから!」


ロース 「でも、死体が運ばれた場所は分かったから、後はそこへ行くだけね」
サーロイン 「だが、あいつらの言う通りなら1分1秒を争うな」


ランプ 「早く!早く!
 この状況だとロインは『ほっとけ』とか言い出しますから!」
「分かったから、黙ってろって」


ブリスケット 「死体の状態を確認している時間も惜しいんで、
 早く城に戻って救助隊を組織した方が良いんでは?」
サーロイン 「いや、もしジャイアントスラグが嗅ぎつけて来ているなら、
 先にそいつを片付けてからの方が被害は少ないだろう」
   
ふぉがっ!!
   



「あ……が……っ」
   
サーロイン 「………………………………(汗)
ロース 「何やってんのよ、こんな時に……」
ブリスケット 「城に戻らなきゃダメじゃねぇっすか……」
   
「お……ぐ……っ!」
ランプ 「あの……大丈夫ですか……?」
   
三洲次 「とにかく早く出発しましょう」
サーロイン 「やれやれ、だな……」

 





 

 

 

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以上が、エレン達を襲った悲劇の真相である。


ここから先は余談となるので簡単に述べるが、ロイヤルレンジャーズの依頼を受けて王国軍から救助隊が編成されると、
幸いなことにジャイアントスラグが死体を嗅ぎつける前に、5人の死体は無事に回収された。

だがエレンには全員を蘇生するほどの資金が無かったので、
彼女はしばらく他のパーティーに参加して、蘇生資金を稼ぐ日々を過ごすこととなった。


酒場の噂では、つい最近、やっと資金が溜まって全員が無事に復活したので、
エレンはまた元のメンバーと共に冒険を続けているとのことである。

 


「21.右へ左へてんやわんやの大騒ぎ」へ



名前 LV H.P. コメント
サーロイン 5 37 18 17 18 16 18 15 0 1 2話も使うほどじゃないけど、1話にするには長過ぎて…
三洲次 5 49 18 18 18 18 18 15 0 1 最後を簡単な文で締めるのも、原作を真似ています。
5 33 18 16 18 18 16 18 0 0 罠の解除が全然安定せず。桃らしいっちゃぁ桃らしいが…
ロース 5 27 16 17 18 18 18 11 0 0 「ノックノック」とか覚えてくれないかなぁ。
ランプ 5 20 12 18 18 13 18 16 0 0 最後の宝箱の中身はお金だけでした。ショボ…
ブリスケット 5 40 17 18 15 18 18 14 0 0 早くディアルコを覚えてほしい。マジな話し。

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2024年 9月 7日:本公開。