16.ローラーレンジャーズの遺産

【登場人物】  
サーロイン ロイヤルレンジャーズのリーダー。サーは敬称。
三洲次 元盗賊だった日本男児の侍。発音は「みすじ」。
接近戦最強のくノ一。でも細かい事は大嫌い。
ロース こんな名前だが細身で美人なエルフの女魔法使い。
ランプ 財宝一筋なエルフの司教。パーティーの知恵袋。
ブリスケット 日本オタクのエルフの僧侶。あだ名は「ブリ助」。

読了時間 (目安):約20分(動画無)約23分(動画込)
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What is evil ?

Whatever springs from weakness.

   Friedrich Wilhelm Nietzsche



「悪」とは何か?

それは全て「弱さ」から生まれしものだ。

   フリードリヒ・ニーチェ(哲学者)

 







──── 前回までのあらすじ.....

迷宮の1階を構えるガリアン海賊団は、労働力と資金源の2つを得るため、
裕福な生活を餌に訓練所を卒業した新米冒険者たちを勧誘していた。
しかし、新米冒険者が加わると、訓練所から支給された支度金を巻き上げた後は、
部下が嫌がる過酷な労働などに従事させて使い潰していた。

当然の如く、新米冒険者だった彼らはその様な待遇に不満を募らせていく。
そして我慢も限界に達すると、唯一ガリアンキャプテンにまで出世したリーダーの統率のもと、
全員から脱走をしたのであった。


だが、この海賊ので脱走は重罪である!


海賊団はすぐにガリアンキャプテン達による追跡隊を組織すると、脱走者の追跡を開始した。
一方、それを察知した新米冒険者たちは、逃走コースを変えて追跡隊をまくことに成功。

完全に顔に泥を塗られた海賊団は、逃げた脱走者たちを絶対に見つけ出すため、
配下にいる大勢の海賊たち迷宮に解き放ったのであった!!

 


【目次】

1.ハンティング・パイレーツ

2.ローラーレンジャーズの遺産




1.ハンティング・パイレーツ




━━━━ 迷宮1階 バラック.....

前回ガリアンレイダー戦ガリアンメイジ戦をこなした我がパーティーは、
呪文の使用回数にまだ余裕があったので、そのままバラックでの経験値稼ぎを続けていました。


サーロイン 「さて、次の魔物を探そう」
三洲次 「そうですね。
 ただ……」


ガチャッ!        ← 扉を開けた音




ガチャッ!


三洲次 「魔物が全然いないんだけど……」
サーロイン 「う~~む……」
ブリスケット 「倉庫の方も見てみやすか?」
サーロイン 「そうだな」




ランプ 「扉の中をそれぞれ覗いてみましょう」


ガチャッ!


サーロイン 「ここも魔物は無しか……」


ガチャッ!


ロース 「ここにもいないわ……」
三洲次 「この迷宮って、時々潮が引くように魔物がいなくなる時がありますよね」
ブリスケット 「反面、やたら海賊どもと遭遇したんは、もしかしてあやつらって、
 魔物が活動を止めるタイミングを把握して行動してんじゃねぇっすか?」
サーロイン 「なるほど……、
 あの程度の強さの海賊たちが平然と迷宮の中を行動しているのには、
 そんな秘密があったのか」
ブリスケット 「あ、いや、ただの推測ですぜ…」
ランプ 「でも、ブリ助の言う通りなら、魔物が活動を止めるタイミングって何でしょうね?
 時間帯なのか……、他に何かあるのか……?」
三洲次 「さぁ……、何だろう……?」
ロース 「どっちにしても、魔物が休んでいるなら、歩き回ってても無駄足じゃない?」
サーロイン 「そうだな。
 その間、俺たちも町に戻って一息入れよう」
ブリスケット 「じゃ、引き返しやすか」


ってな訳で......、


...来た道を戻り......、


...バラックから迷宮の出入り口へ戻るを通っていくと......、

ガチャッ!



サーロイン 「……ん?」
三洲次 「どうしました?」
サーロイン 「なんか海賊たちが集まって、話し込んでるぞ」
三洲次 「へ?」



レイダーA 「湖の方は調べたか?」
レイダーB 「あぁ。
 だが、誰もいなかったぜ」
レイダーC 「倉庫の方は?」
レイダーD 「ダメだ、人っ子一人いねぇよ」
レイダーE 「くっそ~~……、あいつらマジでどこに消えたんだ?」

サーロイン 「また脱走者を探してる集団だ」
三洲次 「相当大勢で探しているんですね…」
ブリスケット 「どうしやす?
 こっちには気付いてねぇですし、こっそりすり抜けやすか?」
サーロイン 「いや、あいつらがちょうど反対側の扉を塞ぐ形で立っているから、すり抜けるのは無理だ」
ランプ 「どっか行くまで待ちます?」
サーロイン 「う~ん、そうだなぁ……」
三洲次 「ま、あいつらの目的は脱走者ですから、
 『我々はただの通りすがりで、無関係です』って言って、通してもらいましょう」
ロース 「大丈夫かしら…?」
三洲次 「大丈夫ですよ。
 だって、俺たちは無関係なんですから」

レイダーF 「そういや、何人かが捜索中に例のパーティーに殺されたらしいぜ」
レイダーG 「くそっ!
 またかっ!!」
レイダーH 「そいつらも見つけ次第、ぶっ殺してやるっ!!」

サーロイン 「関係者にされちゃったよ?」
ロース 「ダメじゃない……」
三洲次 「む~ぅ……」
ブリスケット 「ほんじゃ、気付かれねぇ内に先制攻撃しやしょうや」
サーロイン 「しょうがないな……」


では、先制中に攻撃を始めますが、今回は......


...後ろのグループから攻撃します。
理由は、1グループ目は5人もいるので、そっちは通常ターンに呪文で倒した方が効率的なので。

サーロイン 「じゃ、こっちに背を向けてる後ろの奴らから片付けるぞ」
三洲次 「了解です」
「任せなっ!」


戦闘開始!!

サーロイン とやあああぁぁっっ!!
三洲次 てやあああぁぁっっ!!
死ねえええぇぇっっ!!
レイダー達 「「…え?」」


レイダーF うぎゃあああぁぁっ!!!


レイダーG ぐぎゃあああぁぁっ!!!


レイダーH うわぁあっ?!(サッ!)
三洲次 「…………あれ?」



いや、なんで.....なんでサーロインと三洲次って、
毎回片方は敵を倒し損ねるんだ??!



─── 通常ターン.....


レイダーA 「な……なんだ、てめぇらっ?!」
サーロイン 「どうした?
 何を驚いてるんだ?
 俺たちに会いたかったんだろ?
 出会えたんだから、むしろ喜んでもらわないと」
レイダーB 「こいつら、例のパーティーだっ!!」
レイダーC 「ちくしょうっ!!
 そういうことかっ!!」
レイダーD 「野郎どもっ!!
 殺された仲間の仕返しだっ!!」
レイダーE 「あぁっ!!
 ぶっ殺してやるっ!!
サーロイン 「こっちから来てやったのに、感謝の言葉1つ無いとは……」
ブリスケット 「襲っておいて、何言ってんすか……」
三洲次 「おまえら、威勢がいいのは良いけど…」
ロース 「三洲次!」
三洲次 「…え?」
ロース 「あなたはさっき外した1人を、責任持って倒しなさい」
三洲次 はい………」



サーロイン 「口ばかり動かしていないで、さっさとかかって来たらどうだ?
 俺たちを見つけ次第、ぶっ殺すんじゃなかったのか?」
レイダーA 「ほざけっ!!
 てめぇがリーダーだなっ!?
 この俺がてめぇの首を取って、手柄を立ててやるぜっ!!」
レイダーB 「いや、おまえじゃ実力不足だ!!
 俺が倒してやるっ!!
 手柄をあげるのは俺だっ!!」
レイダーC 「待て待て、おまえじゃ役不足だ!!
 ここは俺が一発で決めて、手柄を貰ってやる!!」
レイダーD 「てめぇ、出しゃばるなよっ!!
 ここは俺に任せろ!!
 手柄は俺のもんだっ!!」
レイダーE 「おまえらは引っ込んでろ!!
 ここは百戦錬磨の俺の出番だっ!!
 手柄を取るのは、この俺だぜっ!!」
レイダーA 「いいや、ここは俺がやる!!」
レイダーB 「俺に任せろって!!」
レイダーC 「ダメだ、俺だ!!」
レイダーD 「いや、俺だ!!」
レイダーE 「俺だって!!」
レイダーA  …△○□×◇…!
レイダーB  …×□◇○▽…!
レイダーC  …◎▽×□…!
……   …○△×…!
…    …………!
   ………!
…    ……!
   
()








10分後........


レイダーA 「俺がやる!!」
レイダーB 「俺だっ!!」
レイダーC 「俺こそが!!」
レイダーD 「俺だよ!!」
レイダーE 「俺だって!!」
:      :
   
   
三洲次 「ふぁ~~………」
ブリスケット 「決まったら教えてくだせぇ……」
   
   
レイダーA 「くっそ~…、埒が明かん!!」
レイダーB 「よし!
 こうなったら、全員で一斉に襲い掛かろう!!」
レイダーC 「そうだな!」
レイダーD 「それがいい!!」
レイダーE 「よしっ!!
 いくぞっ!!
   
ランプ 「結局、全員で一斉に襲うっぽいです……」
サーロイン 「そうか………じゃ、ロース、
 全員を一斉に倒してくれ」
ロース 「はいはい……」


レイダー達 「「ひぎゃあああぁぁぁっっ!!」」
   
サーロイン 「うむ、さすがだ」
ブリスケット 「なんだったんすか、さっきの無駄な時間……」
   
後のレイダー 「………………………………(汗)」
   
ロース 「三洲次っ!!」
三洲次 「はいはい……」


レイダーH ぐはあああぁぁっ!!
   
三洲次 「片付けました」
ロース 「最初っからそのぐらい働きなさいよ」
三洲次 「少しは労ってくれても……」


とりあえず勝利!!



サーロイン 「なんか無駄に疲れたし、ちょっと町に戻って休むか……」
ブリスケット 「そうしやしょう………」

 


 

 

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━━━━ バラック内.....


1人のガリアンレイダーがバラックの中央廊下を歩いていた。

彼も脱走者を追っている1人で、逃げ出した新米冒険者たちをここで探していた。

ただ、彼の探し方は他の海賊とは少し違っており、バラックの廊下に並ぶ扉1つ1つに耳を当てては、
中に誰か居ないかを確認する地味な方法であった。


ただ、どの扉も物音がせず、全ての扉で空振ったまま......、


...バラックの一番奥まで来たところであった。

脱走者が全然見つからず、そろそろ疲れが出て来たそのガリアンレイダーは...、

レイダーA 「まぁ、ここら辺は前に調べたからなぁ……、
 どうせここも……」


...と思いながらに耳を当てた。

その途端、彼は諦めかけていた自分を笑いながら殴りたい衝動に駆られた!

予想に反して、そのの向こう側からが聞こえてきたのだ!

ガリアンレイダーは出来る限りしっかりと扉に耳を押し当てて、中の声に集中した。

??? 「いつまでここに居るつもりなんだ?
 食糧だって限りがあるんだぞ!」
??? 「早く町へ向かおうぜ!
 同じ場所に留まっていたら、いずれ海賊どもに見つかるぞ!!」
??? 「大きな声を出すな、外に聞こえるぞ」


会話の内容から、中に居るのが脱走者だと確信したガリアンレイダーは、薄ら笑いを浮かべ......、

レイダーA 「とうとう見つけたぜ。
 余所へ行く前に、早く仲間に知らせなきゃぁな……」


...と呟くと、一目散にへ向かって走り出した......!



 

 


 

 

 

 

The strength to overcome your own weakness

   is the same strength that will aid others.

                 James Allen



あなたが自分の「弱さ」を克服した「強さ」は、

人々を助ける「強さ」となる。

         ジェームズ・アレン(小説家)

 

 

 

 



2.ローラーレンジャーズの遺産




━━━━ バラック内.....


サーロイン 「一気に倒すぞっ!!」
三洲次 「はいっ!!」



サーロイン (; ゚_゚) ……………………………………
三洲次 (; ゚_゚) ……………………………………



三洲次 うわああぁぁっ?!(ひょい!)
サーロイン ひぃええぇぇっ!?(ぴょん!)
   
ブリスケット 「このお2人、ここに来た頃から全然変わってねぇっすな……」
ロース 「1階でこんな調子だと、後が思いやられるわね……」


おら!おら!おら!おらあぁっ!!


ザコがあああぁぁっ!!


とっとくたばれやあああぁぁっ!!

ランプ 「相変わらず……」
ブリスケット 「前衛で頼りになるんは……」
ロース 「桃だけね……」


三洲次 「ひぃ…ひぃ…ひぃ……」
サーロイン 「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ……、
 全部倒したか……?」
ロース 「半分以上は桃がね」
ランプ 「でも、おかげでお金も大分溜まってきましたよ」
ブリスケット 「じゃ、次へ行きやしょう」


と、まぁ、そんなこんなで......、


...バラックでの修業が続いていました。






━━━━ 迷宮 入り口.....


サーロイン 「休憩が済んだら、引き続き頑張って経験値を稼ごう」


そして今回も......、


...バラックで魔物を探して巡回していきます。

が......、


ガチャッ!




ガチャッ!








サーロイン 「魔物と全然遭わないんだけど……?」
三洲次 「また一斉に姿を見せなくなりましたね」
ロース 「アッと言う間に一番奥まで来ちゃったわ」
ランプ 「ま、根気強くいきましょう」
ブリスケット 「じゃ、次は奥の左手の部屋っすね」
サーロイン 「そうだな」


ガチャッ!

パーティーが扉を開けて中に入ると......、


...中には......、



...海賊の砦からの脱走者たちが集まっていた。


サーロイン 「え……?」





━━━━ バラックの一番奥の部屋.....


部屋の中にいた脱走者たちは最初、とうとう海賊達に見つかったのか?...と戦慄したが、
入って来たロイヤルレンジャーズの装備が全然違うのを見て、まだ助かる可能性が残されていると希望を繋いだ。

しかし、海賊に雇われた”ならず者”という可能性も無きにしも非ず........。

脱走者たちのリーダーであるガリアンキャプテンの男は慎重に相手を見定めつつ、
疑問をハッキリさせる為に問いかけた。

キャプテンZ 「誰だ、おまえらは?」
サーロイン 「人に素性を訊ねる時は自分から名乗るのが礼儀だと思うが……、
 …まぁ、いいだろう。
 我々は最近この国に来た冒険者で、この迷宮にある宝珠を探しているところだ」
キャプテンZ 「…………………………………………」


確かにそういう身なりだが.........、確証はまだない。

サーロイン 「こちらは自分たちが誰かは伝えたぞ。
 今度はそちらが話す番だ」
キャプテンZ 「…………………………………………」


リーダーの男は慎重に言葉を選びながら、答えた。

キャプテンZ 「この迷宮に住み、生活している者だ」
サーロイン 「…………………………………………」


今度はサーロインが、相手の言葉を半信半疑で判断することになった。

リーダーの男をはじめ、中にいる者たちの身なりは、ほぼ間違いなく海賊たちの服装だ。
しかし態度や反応がこれまでの海賊たちとまるで違う

もしかして、こいつらが脱走した海賊たちなのでは......?

だが、そう判断するには決め手が無い.........。

サーロイン 「…………………………………………」
キャプテンZ 「…………………………………………」


リーダーの男とサーロインは、相手の言葉の真偽をお互いに目で探り合った。


その間、サーロインの背後では他のメンバーが小声で話しをしていた。


ロース 「………?
 桃、三洲次、どうしたの?」
三洲次 「いや、あそこに日本人が居るな……と、思って」
「あぁ……」
ロース 「え…?」


ロースが三洲次と桃の視線の先を見ると、そこには日本人の少女が座りながら......、

しんしん
心々 

「……………………………………」


...入って来た者たちを睨むように吟味しているのが見えた。

ブリスケット 「お、本当っすな」
ランプ 「よく気が付きましたね」
三洲次 「いや、部屋に入った途端、なぜか…」
「…すぐ目に入ってよ」
ランプ 「へぇ……、こんな大勢居るのに……?」
ロース 「同じ日本人同士だから、すぐ気付いたのね」
ブリスケット 「って、ことっすかね?」


そこで彼らの会話を途切る様に、再びサーロインが口を開いた。

サーロイン 「俺たちも最近よくこの迷宮に来ているが、会ったことがあったかな?」
キャプテンZ 「さぁな………今日が最初の『会ったこと』ってだけでは?」
サーロイン 「…………………………………………」
キャプテンZ 「…………………………………………」
サーロイン 「う~~ん………」


サーロインは少し"弱ったな"という表情をすると、
このまま会話をしても埒が明かなそうなのと、襲ってくる気配も無いことから......、

サーロイン 「ま、縁があれば、またどこかで会おう」


...そう言って、メンバーに引き返すよう手を振った。


と、言う訳で、"善"のパーティーなので、ここは「立ち去る」を選ぶ。

で、運が良いと、「立ち去る」をした時に「悪」の性格のキャラは「善」に転向することがある。

とは言え、あくまで運次第なので、桃の性格を直すにはこれを何度も何度も何度も何度も....繰り返すことになる。


これだけ長くプレイしてやっと友好的な敵が出て来きたことを考えると、これは長期戦ですよ......。






ん?



........は?



................マジ?!



桃の性格が「G (善)」になった!!!



マジで!?


マジでえええぇぇぇ! ! ! !


奇跡だっ! ! !


一発で転向したよっ!!!


俺、この瞬間、リアルに小躍りしちゃったよ!!!(本当に)


やっべええっっ!!!


超嬉しいっっ! ! !



これは........あれか?

この時、「白桃ゼリー」を食べながらプレイをしていたからか?!

ホワイトな桃を暗示する縁起物を食べていたからだな!!!

あまりの嬉しさに、思わず......


...写真を撮っちゃったよ! ! !

(作者が勝手に納得して浮かれているだけなので、放っておいてください)



ただ........、すると......ここでは何が起きたのか?


では、ここからは、この部屋で起きた出来事を見ていきましょう。










 

~ 取扱説明書より ~

おばあさんが、通りのはげしい道を渡ろうとしているのを見たら、
それぞれの性格ならこんな風にふるまうでしょう。

善(Good):本当の善人ですから、わざわざ行って助けるという、近頃珍しいタイプです。

中立(Neutral):自分が同じ道を渡っているなら助けてあげます。普通の人ですね。

悪(Evil):自己の利益になるなら助けてあげるという、自分に正直な人です。

 










サーロインが扉から出ようとすると、が声をかけてきた。

「あ?
 倒さないのか?」
サーロイン 「あぁ、別にこちらに敵意があるようには見えないからな」
「今日の晩飯代を持ってるぜ、こいつら」
サーロイン 「おいおい……(汗)
ブリスケット 「さすが『悪』の性格っすな……」
ロース 「見境が無いわね……」
悪ぃがブッ倒させてもらうぜ!!
サーロイン 「お、おい、桃……」


その途端、部屋の中にいた少女叫んだ!!

心々 やっぱりこいつら敵だっ!!
 みんな、やられる前に一気にかかるんだっっ!!
   
キャプテンZ 「し、心々……?」


周りの脱走者たちも、心々を抑えようとする。

元新米冒険者A 「ちょっと、心々っ!」
元新米冒険者B 「挑発するなって!!」


だが、がその挑発見逃すはずがなかった!!

ぁああ?!
 上等じゃねぇかっ!!
 まとめてかかって来いやあぁっっ!!!
   
心々 こんな弱い奴に負ける訳がねぇっ!!
 みんな、ひるむんじゃないっっ!!!
   
なにぃい!?


その途端、はズカズカと部屋の中に押し入ると、心々の方へ一直線に向かって行った!!

てめぇっ!!!
 あたいが弱いとか、いい度胸じゃねぇかっ!!!
   
サーロイン 「お、おい、桃!!
 余計なトラブルを起こすなっ!!
 三洲次、早く桃を止めるんだ!!」
三洲次 「やれやれ……」


三洲次の後を追いかけるが、一足先に心々の側までやって来ると...、

あたいが弱いかどうか、まずはてめぇから分からせてやるっ!!
心々 おめぇはどうせ『悪』の性格なんだろっ!?
『弱い』とは関係ねぇだろ!!!
心々 何言ってやがるっ!!!
 強さってのは、力があるとか相手を打ち負すとかだけじゃねぇ!!
 自分の感情や欲望に打ち負けないのも『強さ』だ!!
じゃぁ、怒りに任せて怒鳴ってるてめぇも弱えじゃねぇかっ!!!
心々 全然違う!!!
 うちの怒りは仲間を守るためだっ!!
 だが、おめぇの怒りは自分の為だけだっ!!!
三洲次 「桃、この子の言う通りだ」
「え…?」


桃に追いついくと、三洲次が声をかけた。

「三洲次、おめぇまで……」
三洲次 「『誰の為か?』
 ……それが『善』と『悪』の違いだろ?」
「………………………………」
三洲次 「パッと見で同じ行動に見えたとしても、『善』と『悪』とではその内面が違う。
 道に迷っている老婆の手を引いていたとしても、
 『善』の人はその老婆を助けるためであり、『悪』の人は自分に利益があるからやっている。
 敵対する者に怒りをぶつけるのも、
 『善』の人は仲間を危機に陥れることに対してであり、『悪』の人は自己の権利や尊厳を攻撃してきたことに対してだ」
「それがどうした?」
三洲次 「つまり、
 『善』の性格は『利他的』で、
 『悪』の性格は『利己的』なんだ」
「だから、なんだよっ?!」
心々 だから『善』の人はみんなを幸せにして、
 『悪』の奴はみんなを不幸にするってことさっ!!
なにぃいっ!?
三洲次 2人ともちょっと待つんだ!!
 頼むから極論に走らないでくれ!!」
「………………………………」
心々 「………………………………」
三洲次 「それに今の君の発言は場合によるから、正確ではないしな」
心々 「え…?」
三洲次 「だって、さっきの老婆の例でも、『悪』の人は老婆の困り事を解決しているから、別に周りの人々を不幸にはしていないだろ?」
心々 「む~ぅ……」
「……………………………………」
三洲次 「でも、”自分の感情や欲望に打ち負けないのも『強さ』”って下りは、俺もその通りだと思うよ」
心々 「は…?」
三洲次 「人間ってのは生きてれば様々な問題に遭うし、悩みやコンプレックスもできれば、欲望や羨望だって生まれる。
 それは人間関係かも知れないし…、環境に依るものかも知れないし…、身体的な問題かも知れないし…、お金のことかも知れない。
 そういった不安や不満、欲望や欲求、欠点や脆弱さなどが……人間の『弱さ』だ」
心々 「……………………………………」
三洲次 「そして、その『弱さ』に心が捕らわれたり、あるいは自分の欲望……つまり『弱さ』に価値を見出してしまうと、
 その人は『自分』を満たすことを目的に行動するようになる。
 つまり『利己的』な行動だ。
 そうなると、周りの人たちの迷惑や困り事は二の次だ。
 しかも、それが法やルールで阻まれている場合には、犯罪だって起こり得る。
 それが『弱さ』が生む『悪』だ」
「…………………………………………」
三洲次 「一方で『善』の人だって当然『弱さ』を持っている。
 でも、『善』の人はそれを放置しない。
 もし放置すると、周りに迷惑をかけることを理解しているからね。
 しかし『弱さ』というのはそう簡単に克服できることじゃない。
 克服するには努力し、苦労し、もがき、時には傷付いたり挫折することだってあるだろう。
 でも、そうして得た体験は自信になるし、その自信は『強さ』を与えてくれる。
 そして、苦しみや痛みを経験しているからこそ……人に優しくできるんだ。
 これこそが、本当の『強さ』ってやつさ」
心々 「ほら、見ろ!
 真の『強さ』ってのは、他人を打ち負かすことじゃない!!
 自分に打ち勝つことなんだ!!」
だから何だっ?!
三洲次 「今の桃は、自分の欲望だけで行動している人間だろ?」
心々 「それは、おめぇが弱い人間ってことさ!!」
てめぇぇっ!!
三洲次 桃っ!!
「いちいち、なんだよっ!?」
三洲次 「…………………………………………」
「………?」
三洲次 「なぁ、桃………、
 別に桃を責めている訳じゃないんだよ。
 だって……」
「……………………………………」
三洲次 「……昔の桃は、そうじゃなかっただろ?」
「はぁ…?」
三洲次 「試練場で戦っていた時……、
 諸外国へ遠征していた時………、
 おまえはそこまで傍若無人じゃなかったぞ」
「………………………………………………」
心々 「ふ~~ん……、
 おめぇ、歴戦の冒険者なんだ……」
「けっ…!」
心々 「きっと多くの戦果をあげたんだろうな……」
「てめぇには関係無ぇことだろ!」
心々 「なぁ……、戦果をあげた時にさぁ……」
「あ?」
心々 「…何が一番嬉しかった?」
「………
心々 「自分の強さを相手に見せつけたことか?
 自慢できる手柄を取って、チヤホヤされたことか?
 それとも、報酬や財宝を手にして、自分の財産が増えたことか?」
「……………………………………」
   
   
ブリスケット 「ランプはんは財産が増えたことっすか?」
ランプ 「あのですねぇ…」
ロース 「あら、ブリ助だって、いつも女の子にチヤホヤされようとしているじゃない」
ブリスケット 「いやいや、そいつはですねぇ…」
サーロイン 「そこ、今は黙ってろ」
   
   
心々 「うちの想像だけどさ………昔は、みんなの役に立てたことだったんじゃないのか?」
「………………………………………………」
三洲次 「桃、覚えてるか?」
「………?」
三洲次 「おまえが盗賊に転職した直後、罠の解除が思うようにできず、
 酒場でヤケ酒をしていた日のことを……」
「………………………………」
三洲次 「なんでヤケ酒をしていたか、俺には分かっていたよ。
 おまえは罠が外せないことを気にするタイプじゃない。
 それよりも、みんなの役に立てなくなった自分に嫌気がさしていた、ってね」
「……………………………………」
三洲次 「俺自身、盗賊の時にそうだったからな。
 ……だからあの時、声をかけたんだ」
「三洲次………」
心々 「ほら見ろ……、
 やっぱりおめぇは、自分の強さがみんなの為になっていたから、
 それを思う存分に活かしていたんじゃねぇか」
「…………………………………………」
心々 「なぁ、思い出すんだよっ!!
 みんなの為に戦っていた時のことを!!
 おめぇの『強さ』が、みんなの誇りだった時のことを…!!」
「………………………………………………」
三洲次 「……………………………………」
心々 「それでも………飯代のために人を襲うことが、まだ『強さ』だと言うのか?」
「ちっ、ちっ、ちっ……」
心々 「………ん?」
三洲次 「……?」
「あたいを誰だと思ってんだ?」
心々 「……??」
三洲次 「……???」
「あたいは悪の魔術師を倒し、腹黒い不死王を退け、
 弱きを助け強きを挫き、世界の平和のために戦う
 あらゆる罠を突破する天才くノ一だぜっ!!
三洲次 「おい! いつも皆が毒にやられてるのって、誰のせいだと思ってるんだ!?」
心々 「罠の解除は下手クソなままなのかよ………」
   
   
ロース 「桃が改心したみたいね」
サーロイン 「あの心々って子のお陰だな」
ランプ 「ってか、いつ桃が世界平和のために戦っていました……?」
   
   
心々 「なぁ、1つ聞いていいか?」
三洲次 「なんだい?」
心々 「『悪』の人だって、自分の弱い部分を克服しようと努力するんじゃねぇのか?」
三洲次 「するだろうね。
 でも、目的が違う」
心々 「目的?」
三洲次 「『善』と『悪』の違い……、
 『利他的』か『利己的』か……さ」
心々 「……………………………………」
三洲次 「『悪』の人は自分の目的を実現する為に努力する。
 『善』の人はみんなの幸せの為に努力する。
 桃もそうだったんだよな?」
「……!」


急に三洲次に合意を振られて、桃は一瞬目を丸くしたが......、
すぐに桃は.....彼女にしては珍しく......少し照れた顔を三洲次に見せた。

三洲次 「それじゃ、桃、もういいだろ?
 みんなの所に戻るぞ」
「うぃ」
心々 「……………………………………」


そう言うと、三洲次は2人揃って仲間たちのところに戻って来た。

ロース 「丸く収まったようね」
三洲次 「えぇ、桃が『やらない善意よりやる偽善』とか、話しがややこしくなることを言いださなくて助かったよ」
「あ?」
三洲次 「あ、今のは聞かなかったことにしてくれ」
ブリスケット 「善と悪の話しってぇ、議論しだすと場合によっちゃぁ止まらねぇっすからね」
ランプ 「それよりも、昔を思い出して『善』に改心したんですか?
 昔は『中立』でしたよね?」
「『中立』……」
三洲次 「『皆の役に立つ』ところだけ意識に戻って来たからじゃないのかな?
 ってか、長くなるから、この話しはこれぐらいにしない?」
ランプ 「はぁ……」
「そういや、さっき『中立』の話しが無かったけどよぉ…」
三洲次 「話しをシンプルにするために、あえて触れなかったのっ!!
 マジで話しが終わらなくなるんで、頼むから蒸し返さないでくれるっ!?」
「む~ぅ……」


一方、無事に戻って来た2人を見届けると、サーロインリーダーの男に話しかけた。

サーロイン 「うちの桃が迷惑をかけたな」
キャプテンZ 「こちらも、あの子の無礼をお詫びさせてくれ」
サーロイン 「いや、その事については、むしろ感謝している」
キャプテンZ 「え?」
サーロイン 「桃の性格が『悪』になって、実は困っていたんだ。
 だが、あの心々って子が問い質(ただ)してくれたお陰で、改心してくれた。
 むしろ、あの子にお礼を言わせてもらえなか?」
キャプテンZ 「心々はそんなつもりは無かったと思うが……まぁ、そう言うなら。
 おい、心々!!」


リーダーのガリアンキャプテンに呼ばれ、心々サーロインの前までやって来た。

キャプテンZ 「この方が、君に礼を言いたいそうだ」
サーロイン 「パーティーのリーダーを務めるロインだ。
 実は桃の性格が変わって困っていたのだが、君のお陰で問題が解決したよ。
 どうもありがとう」
心々 「別に感謝される様なことはやってねぇよ。
 あたいは仲間を守りたかっただけだ。
 だから、むしろキャプテンの方が先に感謝を言うべきなんじゃねぇのかなぁ~?」
キャプテンZ 「あ、いや、そうだった!
 心々、勇気ある行動をありがとうな!」


心々はいたずらっ子っぽい笑顔でそれに応えた。

ロース 「あの心々って子、なんか面白い子ね」
ランプ 「勇気もありますし」
ブリスケット 「ってか、あの子って、顔が三洲次っちに似てねぇっすか?」
ロース 「あ! そう言われると、目元とか口元とか、三洲次にすごいそっくりだわ!」
ランプ 「でも、喋り方や性格はむしろ桃にそっくりですよ」
ロース 「なんかまるで三洲次と桃を足し合わせたような子ね」

サーロイン 「じゃぁ、次は私の番だ。
 君には借りが出来た。
 何か礼をさせてくれ」
心々 「別に礼なんていいよ」
サーロイン 「しかし、それだと…」


と、その時事態が急変した!!

勢いよく叩く者たちが現れたのだっ! ! !

??? おいっ!! 居るのは分かってんだっ!!!
??? 大人しく出て来いっ!!!
??? 悪いようにはしねぇからよぉっ!!!
??? 「「はぁーーーっ、はっはっはっ!!!」」


突然のことに、脱走者たちパーティーの全員の方に目をやった!!


サーロイン 「……………?」
キャプテンZ 「しまった、とうとう見つかった………」


だが、これで先ほどの推測確信に変わったサーロインは......、

サーロイン 「そうか………海賊どもが探している脱走者とは、やはり君たちだったんだな」
キャプテンZ 「知っていたのか……?!
 それなら、喋ってもいいだろう。
 ここに居る者は全員、実は訓練所を出て冒険者を目指していた仲間なんだ」
サーロイン 「ほぉ」
キャプテンZ 「だが、海賊たちに裕福な待遇をチラつかされてな……それで海賊団に入ったんだ。
 しかし奴らの目的は訓練所で支給される支度金と、安くて使い捨てにできる労働力だったんだ。
 だから、金さえ手に入れば俺達のことなどはどうでもよく、後は過酷で危険な仕事ばかりさせやがった」
サーロイン 「なるほど、奴らの考え付きそうな手口だ」
キャプテンZ 「だが、そのやり方が気に喰わなくてな………、
 それで、みんなで脱走してきたんだ」
サーロイン 「そうか……、奴らに関わって、辛い思いをしたんだな」
キャプテンZ 「あぁ…」
サーロイン 「だが、訓練所を出た者ならば、我々は志を共にする仲間だ。
 『善』のパーティーとして、君らを見捨てる訳にはいかない」
キャプテンZ 「え?」
サーロイン 「何より桃を改心させてくれた恩がある。
 扉の外にいる追手は、我々がキレイに片付けよう」
キャプテンZ 「お、おい、裏切者を始末する役をやるなんて、海賊たちの中でも特に汚いことをする奴らだぞ?!」


その間も扉は乱暴に叩かれ、外からは罵声が飛んで来ていた......

??? おらぁっ!!
 とっと出て来いやぁっ!!
??? こっちはおめぇらがどんな顔して出て来るのか、
 楽しみにしてんだっ!!
 いつまでも待たせんじゃねぇっ!!
??? てめぇらは、もう終わりなんだよっ!!!


サーロインは一瞬だけの方を睨むと、すぐにリーダーの男の方へ向き直った。

サーロイン 「なぁに、こういうコトには慣れっこさ」
キャプテンZ 「しかし……」
心々 「いや、キャプテンの言う通りだ!
 やつら、何をしでかすか分かったもんじゃねぇぜ!!」
「心配すんなって」
心々 「…え?」


そう言うと、桃は心々に向かて軽くウィンクしてみせた。

「あたいらに任せな」
心々 「……………………………………」
サーロイン 「表が静かになったら、掃除が終わった合図だ。
 奴らが戻らなければ新しい追手が来るだろうから、君たちはその前に町まで戻るんだ」
キャプテンZ 「会ったばかりなのに………なんて礼を言っていいのか…………」
サーロイン 「礼なんて不要さ。
 これは君たちへの感謝の印だ。
 酒場で会える時を楽しみにしているぞ」
キャプテンZ 「あぁ、気を付けてな……」
サーロイン 「うむ」


リーダーの男がを出すと、サーロインはその手を力強く握り返した

そしてメンバーの方に向き......、

サーロイン 行くぞっ!!


...そう声をかけて........、


...を開けて外へ踏み出した





から出た途端......、




...ガリアンキャプテンの一団エンカウント!


ローラーレンジャーズことロイヤルレンジャーズ6人は、サーロインを先頭にして1人ずつ廊下に出て来ると、
最後尾のロースは後ろ手で静かに扉を閉めた。

そして全員が扉と海賊たちとの間に立ちはだかった。

廊下にいた海賊たちは全く知らない面子の登場に、全員が予想外の表情を見せる......。

キャプテンA 「え…??」
キャプテンB 「誰だ、てめぇら……?」
サーロイン 「おまえ達が出て来いと言うから、期待に応えて出て来てやったんだぞ。
 歓迎の拍手で迎えるのがマナーってもんじゃないのか?」
キャプテンC 「はあ??」
キャプテンD 「ふざけてんのか、てめぇ?!」
サーロイン 「まぁ、いい………。
 それで、俺たちに何か用か?」
キャプテンA てめぇらなんかに用は無ぇよ!!
キャプテンB おい!!
 その部屋に俺たちの仲間がいるんだろっ!?
 分かってんだからなっ!!
キャプテンC そこに居ると邪魔だ!!
 とっととどっかに消えろっ!!
サーロイン 「消えるのは……………おまえ達の方だ」
キャプテンD なんだとっ?!
キャプテンA てめぇっ!!
 ふざけたことをぬかしていると、イタイ目を見るぜっ!?
キャプテンB もっとも、女たちには気持ちイイ目を見せてやるけどなっ!!
海賊たち 「「ひゃーーーーっ、はっ はっ はっ はっ! ! !」」
サーロイン 「…………………………………………」
キャプテンC 「おい!
 女は2人とも上玉じゃねぇかっ!!
 近くにいる仲間たちも呼んで来いっ!!
 みんなでタップリと味わせてもらおうぜっ! ! !
サーロイン 「仲間は来ない………」
キャプテンD 「あ…?!」
キャプテンA 「なんだって…?!」
サーロイン 「仲間は呼んでも来ない……と、言ったんだ」
キャプテンB 「へっ!
 本当に仲間が来ねぇかどうか、確かめてやろうじゃねぇかっ!!」
サーロイン 「確かめる必要は無い………。
 なぜなら俺たちが、おまえらの仲間を片っ端から殺してきたからな……」
キャプテンC 「なにっ!?」
キャプテンD 「おい! こいつらって、もしかして……」
キャプテンA 「あぁ……、
 最近、俺らの仲間を殺し回っているパーティーだぜ!」
サーロイン 「そして、ここから立ち去らないのなら………」
キャプテンB 「……ん?」
サーロイン おまえ達も同じ運命だっ!!!
キャプテンC ざけんじゃねぞっ!!!
 てめぇっ!!!
 なめるのもいい加減にしろっ!!!
キャプテンD くだらねぇお喋りはここまでだっ!!
 まずはてめぇらから地獄へ送ってやるっっ!!!


海賊たちはその声と共に、全員がカットラス(舶刀)鞘から引き抜いたっ!!

鞘と刃が擦れる甲高い金属音が迷宮内に響くっ!!!

キャプテンA 誰にケンカを売ってるのか、タップリと分からせてやるぜっ!!!
サーロイン おまえらこそ誰を相手に剣を抜いたのか
 分かっているんだろうなっ!!?
キャプテンB 「へっ!
 どうせ金と名誉に釣られてこの国にやって来た、どこの馬の骨とも分からん冒険野郎どもなんだろ?!」
サーロイン 知らないのなら、教えてやろう!!


そう言うと、サーロインたち前衛3人一歩前へと進み出た!!

海賊たちはその気迫に押され、砂利の音を周囲に響かせながら、全員が数歩後退する......。

海賊たち 「「……ぅぅっ………」」
   
サーロイン 「俺たちは……」
三洲次 「リルガミン国王直々の命令で……」
「任務を遂行する……」
   
海賊たち 「「……え?」」
   

  ! ! !
   
海賊たち 「「!?」」
   
サーロイン 「誰を相手に剣を抜いたか………これで分かったか?!」
   
キャプテンA 「お…おい、こいつらって、草の根の冒険パーティーじゃねぇよ!
 国の部隊じゃねぇか!!」
キャプテンB 「俺たちの一存で手を出しちゃダメなんじゃねぇのか?!
 だって、こいつらに手を出したら、国にケンカを売ることになるぞ!?」
キャプテンC 「う……うろたえるなっ!!
 こんな部隊がいるなんて、聞いたことがあるか?!
 トレボーの時代には魔除けを取り戻した伝説の親衛隊とかいたらしいが、今はそんな部隊などいないはずだっ!!
 こいつらの言っていることは、ただのでまかせだっ!!
サーロイン 「……………………………………」
キャプテンC それに、万が一こいつらが国の部隊だとしても、恐れることはねぇっ!!
 こっちの方が『強い』ってことを見せつけて、国をビビらせばいいだけだっ!!!
サーロイン 「いいだろう。
 おまえらとは……」
キャプテンD 「え…?」


サーロイン三洲次の3人は......、

三洲次 「…『強さ』そのものが違うってことを……」


...鞘に納めている段平をその手に掴むと......、

「…見せてやるぜ」


......ゆっくりと鞘からを引き抜いていく........。



美しくも冷徹に澄んだ3本の白銀の刀身が......


....試練場時代からの多様な戦闘経験を語るかの如く......


 ....薄暗い岩窟内に様々な色合いの光を放ちながら......


  ....その姿を現す............。


キャプテン達 「「ぅ………(汗)」」


そしてサーロインは......

サーロイン 「真の『強さ』というものを…」


...一歩前へ出ると......、


サーロイン 「…見せてやろうっ!!!


...ガリアンキャプテン襲い掛かった!!!

キャプテンA うわあああぁぁぁっ! ! !


スカッ!


サーロイン (;゚_゚) …………………………
キャプテンA   (゚0゚;) …………………………
   
ブリスケット なしてそこで外すんすかっ!?
ランプ これまでの空気が台無しじゃないですかっ!!
ロース 「はぁぁああぁぁ……(怒) 」
   
キャプテンB 「お、おい!
 こいつら、どうやら見かけ倒しだぞっっ!!」
キャプテンC 「おまえら!!
 やり返すんだっ!!!」
キャプテンD 俺たちの『強さ』を見せてやれっ!!!」
ガード達 「「おぉっ!!」」
   
三洲次 「おまえらの様な……」
   
海賊たち 「「……え?」」


キャプテンA ぎひゃあああぁぁぁっ!!!
   
三洲次 「…身勝手な奴らの……!!」
「…『強さ』ってのはっ……!!」


キャプテンB ぐほわあああぁぁっ!!!
「…『弱い』ってことの裏返しなんだぜっ!!!
   
ガードたち 「「ひぃいっ!?」」
キャプテンC 「く…くそっ!?」
キャプテンD 他の2人は手強いぞっ!!
ガードA 「あわわわわ……」
   
三洲次 「そして……」
「…そんな『弱い』性根じゃぁ……」
   
ガードA 「こ……このままじゃ、殺されちまう…?!」


ガードA 助けてくれええぇぇっ!!!
   
キャプテンC 「あ、こらっ!!」
キャプテンD 「勝手に逃げるなっ!!」
   
三洲次 「…苦難や苦境に立ち向かう力も……」
「…心も無ぇのさっ!!」
   
キャプテンC 「お、おい!
 この状況はヤバいぞっ!!」
キャプテンD 「くそっ!!
 ここは一旦退却するんだっ!!」
   
ランプ 「先に剣を抜いたあなた達に、そんなことが許されるとでも…?!」


ランプ 「残ったキャプテン達の動きは封じました」
ブリスケット 「後はガードどもだけですぜ」
ロース 「そいつらは、私に任せて。
 あなた達っ!!
 何かタップリと味わいたいとか言っていたわね!?
ガードたち 「「え…?」」
ロース お望み通り、タップリ味わせてあげるわっ!!!
ガードたち 「「ひっ!?」」


ロース マハリトの火焔をねっ!!!
   
ガードたち 「「ふぎゃああああぁぁぁっ!!!」」
   
ロース クズにはそれで充分よっ!!!


─── 2ターン目.....


サーロイン 「では、残りもキレイに掃除しておこう」
三洲次 「えぇ、彼らが通るのに邪魔ですからね」



キャプテン達 「「ぐぃぎゃああああぁぁっ!!!」」



サーロイン 「『強さ』とは、自分の欲望を実現するために身に付けるものじゃない。
 『守るべきものを守るため』に身に付けるものだ」



6人は武器を収めると......、


......海賊たちの死体を背に、その場から去って行った.........。











まぁ、終わったのなら、側に居るんだから声を掛けろよ...とも思うけど、
ゲームの進行上そういう動きも無いので。


 

…………………………………………



………………………………



……………………



…………






━━━━ 脱走者たちの居た部屋.....

元新米冒険者A 「静かになったわね………」
元新米冒険者B 「本当にあいつらを片付けてくれたのかな……?」
キャプテンZ 「よし、俺が確認してくる」
元新米冒険者C 「気を付けろよ」
キャプテンZ 「あぁ」


脱走者たちリーダーの男は、なるべく音がしない様にそっとを開けると、廊下の様子を覗き込んだ。


キャプテンZ 「これは………」
   
元新米冒険者D 「おい、どうした?」
   
キャプテンZ 「本当に海賊たちが全員やられている!!」
   
元新米冒険者E 「マジかよ?!」


リーダーの声を聞いて脱走者たちが廊下に出て来くると、
彼らの目に入ったのは廊下に転がっている大勢の海賊たちの死体であった。

元新米冒険者F 「助かったんだ………」
元新米冒険者G 「私たち、助かったのねっ!!」


全員歓喜の声をあげる中、最後に部屋から出て来た心々も、廊下一面に倒れている海賊たちの死体を見渡すと......、


心々 「すげぇ………」



...ロイヤルレンジャーズの戦果に感嘆の声を漏らした。

キャプテンZ 「よし!!
 今の内に町まで行くぞっ!!」


海賊団から脱走して来た者たちは、怪我などをした者をかばいながら、再びへと向かって移動を始めた。

ただ、心々だけはその場に立ったまま、変わり果てた海賊たちの姿に見入っていた。

それに気づいた最後尾の男が、心々に移動するように催促する。

元新米冒険者H 「おい、どうした、心々?
 町へ行くぞ!!」
   
心々 「……あ?
 あ、あぁ………」


その声で我に返った心々は、もう一度だけ廊下の状況を一瞥すると......


.....心の中である決意を固めて.....、仲間たちと共に町へ向かって移動し始めた。

 



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名前 LV H.P. コメント
サーロイン 4 22 17 16 18 15 18 15 0 1 おまえ……いくらなんでも攻撃を外し過ぎだろ……。
三洲次 4 31 18 18 18 18 18 15 0 1 サーロインよりは攻撃を当てているが、今一歩だよな…。
4 27 18 17 17 18 15 17 0 0 よくぞ一発で善へ転向してくれた! でも桃が『善』?!
ロース 5 27 16 17 18 18 18 11 0 0 マハリトを習得すると、やはり一気に強くなるな!
ランプ 4 16 13 18 18 13 18 15 0 0 おまえ、財産を手にするのが絶対に一番嬉しいだろ?
ブリスケット 5 40 17 18 15 18 18 14 0 0 おまえ、女の子にモテるのが絶対に一番嬉しいだろ?

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2024年 7月13日:本公開。